その辺の趣味ブログ

主に映画の話しかしません。

好きな映画『シェーン』

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好きな映画の紹介でも。今回は西部劇の歴史を塗り替えた傑作「シェーン」

「シェーン、カムバック!」風と共に男は去り、血と砂と少年がそこに残った。以下はあらすじ。

南北戦争後のアメリカ西部。横暴な牧場主ライカーとの対立に苦しむ開拓者のジョーとその家族の前に、シェーンと名乗る流れ者が出現する。一家のもとに身を寄せることになったシェーンは、ジョーの仲間の開拓者たちとも交流を深めていくが、彼らを追い出そうとするライカーの暴力は激化し開拓者の1人が殺されてしまう。やがて、シェーンは単身ライカー一味のもとへ乗り込んでいくが……。

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残酷描写の導入で時代劇の歴史を変えたのは黒澤明の「用心棒」だが、西部劇の歴史を変えたのは本作「シェーン」だ。

ハリウッドが映画の表現に関して自主規制を強いてた時代、いわゆる「ヘイズコード」が幅を効かせていた中で、シェーンが見せた数々の表現・演出は、当時劇場に訪れた観客や、同業である映画製作者たちの度肝を抜いた。

発砲の際に鳴り響く迫力ある効果音、撃たれた相手の吹き飛び方、胸を押さえて倒れないやられ役など、今となっては当たり前となった数々の表現は、シェーンが初めたことによって生まれたもので、このリアルで真に迫った演出が誕生した背景には、監督であるジョージ・スティーヴンスが、第二次大戦で戦場カメラマン(映画班)として従軍した経験が生かされているという。

その背中に影を落とす風来坊シェーンと、彼が身を寄せる家族との間に生まれる奇妙な絆。無口ながらも、次第に家族たちから認められる存在となるシェーンの姿に、あの山田洋次は大きな影響を受けていて、後に高倉健倍賞千恵子を主演に「遥かなる山の呼び声」としてリメイク版(に近いリスペクト映画)を作った。ちなみにこの遥かなる山の呼び声というタイトルも、シェーンの主題歌「The call of the far away hills」から引用されたものだ。

ハリウッドにおいても、あのサム・ペキンパーがこの映画に強い影響を受け、後にシェーンの暴力描写を更にアップグレードさせた「ワイルドバンチ」を制作するに至った。最近では、アメコミ映画「ローガン」でもその内容が引用されるなど、今なお不朽の名作として、西部劇の傑作として、人々の記憶に残り続けている。

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好きな映画『ヒックとドラゴン』

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好きな映画の紹介でも。今回はディーン・デュボア、クリス・サンダース共同監督のヒロイック冒険ファンタジーヒックとドラゴン

人間とドラゴン、戦争と調和。相互理解・不理解がもたらす軌跡と奇跡の物語。以下はあらすじ。

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以前より、バイキングとドラゴンとの戦いが続いているバーク島。ある日、平凡な少年、ヒックはケガをしたドラゴンのトゥースと偶然に出会う。本来なら敵同士であるヒックとトゥース。しかし、二人の距離は少しずつ縮まり、やがて誰にも知られないように友情を育んでいく…。

アニメ作品のアカデミー賞と言われるアニー賞において、作品賞含む主要10部門を総なめにした、アンチディズニー集団ドリームワークスの傑作アニメーションシリーズ第一弾。

イギリスの児童文学作家クレシッダ・コーウェルの「ヒックとドラゴン」を原作とする本作は、原作から設定やキャラクターを大きく変更させており、とりわけ主人公ヒックと相棒トゥースの関係性や、ドラゴンの生態を知ったヒックが、人間とドラゴンとの間で中を取り持つ姿などは、映画オリジナルの要素であり、原作と映画は殆ど別物と言っていい。

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ヒックが住むバーク島は、屈強なヴァイキングたちが軒を連ねる小さな島国。ヴァイキングといえば、まさしく海賊のイメージそのままに、掠奪を生業とする海のギャングの様に思われがちだが、その生活の多くは故地における農業や、遠征先での交易が主であり、実は掠奪自体は仕事ではない(映画の中でも農業や漁業を生業としている描写が見受けられる)。

ヴァイキングが活躍していた時代は凡そ800年〜1050年。そしてその活動地域は、スカンディナヴィア半島、バルト海沿岸全体となる。北欧の地に住まう彼らにとって、信じる「神」とは「自然」や「世界」そのものであり、イングランドの支配が及ぶ800年代末ごろまでは、俗に言う精霊信仰・アニミズムが長年土地に根付いていたという。

これが何を意味するかというと、つまるところ彼らの思想・死生観にキリスト教的な考え(懺悔・施し・赦し)は一切絡んでこないということで、ヒックとドラゴン本編においても、ヴァイキングたちは勝利や奇跡を雷の神「トール」や、戦いの神「オーディン」などに希う。彼らにとっては勇ましさや豪傑さこそ信じる「神」であり、臆病、後悔、迷い、情けなどは、即“弱者”として切り捨てられ、それはそのまま死に直結する。

後悔・反省とは無縁で無頓着。ヴァイキングとは現代でいう超体育会系かつ肉食の脳筋集団であり、そこにヒックのような繊細で思慮深い人間がいることがどれだけ大変かは、映画本編を見ていればよく分かる。また、ヒックはたまたま族長の息子というポジションにいたために“まだ”大目に見られていたフシがあるものの、これがもし平民の子であったとしたら、気紛れに殺されていたとしても不思議ではない。ヴァイキングの世界は、=北斗の拳、マッドマックスと思って差し支えない。

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さて、ここからが本題。なぜヴァイキングの思想や生態について前置きしたかというと、それはこの物語自体がヴァイキング(海賊時代)の終焉、つまり土着信仰を脱ぎ捨て、新たな価値観を獲得していく物語に他ならないからだ。そしてその先頭に立ち、新たな「教え」、ドラゴンとの融和を取り持つのが主人公のヒック。

彼が相棒のトゥースと共に繰り広げる数々の冒険は、神話や民話に基づく英雄譚としても受け止められるが、その本質にあるのは、奪うだけでなく、他者を受け入れること、分け与えることの大切さを説く「伝道」に近い。つまり、ヒックの教える新たな概念、ドラゴンと人との融和の様子は、言い換えれば「キリスト教」の教えである。

そしてその新たな教え、概念は、やがてドラゴンとの戦争に負けて滅びる運命にあったヴァイキングたちの命を救い、真の意味での平和をバーク島にもたらす。ヒックは正しく救世主、ヴァイキングたちのイエス・キリストだ。

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ヒロイン・アスティの存在もかなり重要だ。彼女はヒックの最初の理解者であり、また最後までヒックを疑い拒絶していたアンチキリストでもある。ドラゴンと関わるヒックに対して、懐疑的な目を向けるアスティだったが、トゥースの背中に乗り、生まれて初めて空を飛ぶことによって、それまでの価値観が全て崩壊、再構築される。まさに、「眼から鱗」というやつだ。

ある意味で「盲目」の状態であったアスティは、新たな教えによって新たな世界を垣間見る。「眼から鱗」の語源となった元ユダヤ教徒使徒パウロは、光によって奪われた視力を新たな教え、キリストのお告げによって回復させる。その際に眼から鱗が落ちたという逸話は、聖書に載っている通りだ。キリスト教に目覚めたパウロは、後にキリストの活躍を描いた新約聖書を執筆することで、イエスの英雄譚の紡ぎ手となる。アスティは、ヒックにとってのパウロといえる。

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パウロの回心

なんだかキリストだのパウロだの、とたんに宗教色が強くなってきたが、これは物語の舞台設定上、時代背景上避けては通れない話なので仕方がない。というのも、史実上ヴァイキングの衰退とキリスト教の伝来には大きな関係があるからだ。

878年、ヴァイキングの指導者グズラムは、イングランドのアルフレッド大王に敗れ、これによってイングランドにおけるヴァイキングの居住地を定める協定が結ばれる。これがヴァイキングたちの終焉、そして彼らの住む北欧にキリスト教が持ち込まれるきっかけとなったわけだが、その教えが映画同様、北欧の人々の平和や融和に繋がったかといえば、そんなことはなかったことは歴史が証明している。

話をヒックとドラゴンに戻すと、ヒックは敵であったはずのドラゴンを人間たちと引き合わせ、共同体としての新しい生活を始めることに成功する。この共同体による文明の発展・革命というのは、どこかで聞いたことがあるというか、まさしくアメリカそのものである。ヴァイキングたちが持っていた旧来の価値観(アニミズム)はそのままに、ヒックが持ち込んだ新しい考え(キリスト教)もごちゃ混ぜにして、一つの運命共同体として生活する姿は、ヴァイキングキリスト教原理国家というより、リベラルな欧米のそれに近い。

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自然信仰をするヴァイキングたちにとって、その化身ともいえるドラゴンたちは、本来争う対象ではなく、むしろ信仰の対象(神)として崇め奉る存在になっても不思議ではないのだが、そこは侵略者、開拓者としての魂が優ってしまうのが人間の常。アメリカがかつて入植の時代に犯したのと同じ過ちを繰り返すヴァイキングたちだが、そこに仲介として入るヒック(そしてトゥース)の存在が、自然と人との繋がりを結びつけ、本当の意味でのアニミズム信仰(自然との持ちつ持たれつ)、そして正しい意味でのキリスト教(施し・融和)の教えを取り戻していく。まさしく、今の時代だからこそ描けた、今の時代だからこそ必要なものを描いた、傑作アニメーション映画だ。アニー賞を総なめにしたのも納得の名作である。

ヒックとドラゴン 1 伝説の怪物 (How to Train Your Dragon (Japanese))

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好きな映画『ホーリー・マウンテン』

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好きな映画の紹介でも。今回はアレハンドロ・ホドロフスキーの「ホーリー・マウンテン

ルネ・ドーマルの「類推の山」を原作とする、精神の修行と旅、そして解放をサイケデリックに描いたトンデモロードムービィ。以下はあらすじ

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とある砂漠ではりつけにされ、裸の子どもたちに石を投げつけられているキリストに似た風ぼうの盗賊。自力で十字架から降り立った彼は、居合わせた男と共に町へ向かう。町ではキリスト像を売る太った男たちに捕らえられ、鏡の部屋に閉じ込められてしまう盗賊だったが、何とか部屋から脱出し…。

映画を作っているのか、宗教をやっているのか、微妙かつ絶妙な立ち位置でいつも奇天烈な映画を作るホドロフスキーが作った長編三作目は、前作「エル・トポ」を大層気に入ったジョン・レノンからの支援もあり、予算を十分に確保した状態(なんと100万ドルの出資があった)で製作に臨んだ意欲作だ。この映画は、終始抽象的かつ意味不明な描写ばかりが連続しているので、一瞬「もしやカンで撮っているのでは?」と勘繰りそうになるものの、実はシーン一つ一つにはちゃんと意味が込められている(当たり前だ)。

まず、ホーリーマウンテンに登るために選ばれた9人の男女は、作中でも示している通りそれぞれがタロットカードの役割を担っていて、主人公である「盗賊」が担当するのは、旅する愚か者こと「愚者」のカード。

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このカードが示すように、主人公はいつも着の身着のまま、欲望が赴くままに行動を起こし、釣られては騙され、騙されては釣られを繰り返していく。何故なら彼が体現するのは俗物であり、直ぐに金に目が眩む大衆そのものであるからだ。

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一度張り付けになる姿といい、その風貌といい、この主人公はどう見てもキリストのそれに見えてしまうわけだが、これにも勿論意味はある。

この物語自体、主人公である盗賊が、欲を脱ぎ捨て悟りを開き、最終的に「普通」の幸せを獲得して山を降りていくという、一度死んで生まれ変わる(復活)過程を描いていくわけで、この映画はつまるところ転生の話でもあるのだ。だから、主人公はキリストなのだが、神を目指して人に堕ちるというあべこべな描き方が、いかにもイタズラ好きで底意地の悪いホドロフスキーらしい。

ちなみに序盤から出てくる四肢のない中年男性は、ホドロフスキー曰く、主人公の内面にある「純粋さ・幼さ」の化身(要するにイマジナリーフレンド)であるらしく、終盤で彼を海に捨てる場面は、自分の中の幼児性との決別、精神の成長を描いているようなのだが、そんな説明は一切ないので分かる方が難しい。相変わらず、ホドロフスキーの映画は分かりやすいようで分かりづらい。

他にも難解な箇所が多分に登場するため、一度見ただけは「?」しか湧かない映画ではあるが、その強烈すぎるビジュアルや、風刺に満ちたストーリー、そして終始目を離せない圧倒的なオーラは驚嘆に値するので、未見の人には是非一度観てもらいたい。

いかにもカルトでネジの外れたこの映画だが、撮影時は実際にかなりのカルトというか、グレーゾーンギリギリなことをやっていたという。例えば日本人の禅道士と一週間寝ないで修行をしたり、出演者全員で1ヶ月くらい共同生活をしたり、挙げ句の果てにはLSDやマジックマッシュルームを使って神秘体験をした後に、そのイメージを映画に反映させたり、映画同様やることなすことめちゃくちゃである。こんな並外れたことができるのは、後にも先にもホドロフスキーくらいだろう。

一生に一度は観ておいても損はない、カルト映画の聖なる頂。そのオチも含めて、見るもの全てがホドロフスキーからバカにされる(イタズラに翻弄される)、究極・最強の風刺映画だ。

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入門『ブライアン・デ・パルマ』

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新年明けましておめでとうございます。今年一発目の記事は、カルトからゴミ映画まで多彩に生み出す名作家にして、アカデミー賞からシカトされ続けた無冠の巨匠デ・パルマの特集です。

ブライアン・デ・パルマ、それは、覗きとストーキングと暴力と負け犬が大好きな変態フィルムメーカー。「しつこい!」と言われ続けてもなお、作風を曲げずに似たような映画ばかりを作り続けた偏執狂。だが、その影響力や、当たった時の面白さが半端ではない凄い人。

そんな清濁併せ持つ彼の作品群ですが、とにかく本数が多い(長編だけで30本近くある)ために、初心者にとってはやや取っ付きにくいのも事実。というわけで、独断と偏見に基づく「とりあえずこれだけは見とけ」という、デ・パルマ初心者のための作品紹介をしていきます。それでは早速いってみよう。

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その①「ファントム・オブ・パラダイス(1974)」

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出ました。デ・パルマの代表作にして最高傑作。70年代、アメリカのミッドナイトムービーで大成功を収めたことによって、一躍デ・パルマの名を世に轟かせた出世作、そしてカルト映画のど定番の一本です。

主演はデ・パルマの学生時代からの盟友ウィリアム・フィンレイ。内容はロックとオカルトとミュージカルが合体した、オペラ座の怪人風味の闇鍋といった感じ。色んな意味でめちゃくちゃな映画ですが、めちゃくちゃ面白いのでとにかくオススメ。全社畜が泣いた。

オススメ度-★★★★★

悪趣味度-★★★★★

演出の凝り具合(しつこさ)-★★★★★

作品の完成度-★★★★★

 

その②「キャリー(1976) 」

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いじめられっ子のリベンジ映画ことキャリーです。原作はスティーブン・キング。余りにリアルで陰湿ないじめの描写は、キングが自分の奥さんから聞いた話を元に作ったとか。とにかく陰湿かつ凄惨で救いのない映画ですが、その復讐ぶりの凄まじさや、主演のシシー・スペイセクの迫力、そして名優ロディ・パイパーのネジの飛んだ怪演が光るホラームービーの傑作。続編、リメイク版は見なくていいです。ちなみにキングにとってキャリーは初めてヒットに恵まれた作品らしく、非常に思い入れが深いんだとか。

オススメ度-★★★★☆

悪趣味度-★★★★☆

演出の凝り具合(しつこさ)-★★★★☆

作品の完成度-★★★★☆

 

 

その③「殺しのドレス(1980)」

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ゴリゴリのヒッチコックフォロワーであるデ・パルマがノリノリで作った、「サイコ」をモロパク…オマージュしたサスペンス映画。長回し風編集や、モンタージュ、そしてトリックなど、ヒッチコックの作風を独自の解釈でもって作り上げた数々の映像は、ややしつこいながらもめちゃくちゃカッコいい。ちなみにヒロインのナンシー・アレンは、デ・パルマ作品の常連であり、当時の奥さんでもあります(この映画の3年後に離婚)。

オススメ度-★★★★☆

悪趣味度-★★★★★

演出の凝り具合(しつこさ)-★★★★★

作品の完成度-★★★★☆

 

 

その④「ミッドナイトクロス(1981)」

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これぞデ・パルマ、これぞ映画な一本。偶然居合わせた事故現場から始まる、女と男のミステリーサスペンス劇。ぶっちゃけプロットや元のアイディアはアントニオーニの「欲望」のパク…オマージュなものの、音声トラックを繋ぎ合わせ、事件の真相へ徐々に近づいていく描写の面白さ、異様なまでの演出のこだわり様は、流石のデ・パルマ、めちゃくちゃ上手いです。そしてラストに待ち受ける衝撃の展開も、やはりデ・パルマらしさに溢れていて素晴らしい。

余談ですが、タランティーノはこの映画に出ているトラボルタのカッコよさに心底惚れたらしく、パルプフィクションで出演のオファーをかけたのも、この映画を見たのがきっかけなんだとか。

オススメ度-★★★★★

悪趣味度-★★★☆☆

演出の凝り具合(しつこさ)-★★★★☆

作品の完成度-★★★★★

 

 

その⑤「スカーフェイス(1983)」

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暴走、暴発、暴力、暴虐。核弾頭のごときデ・パルマの凶暴性が炸裂した、ダーティピカレスクロマン・スカーフェイスです。ハワードホークスの「暗黒街の顔役」を大胆にリメイクした本作は、主人公がとにかく悪いことを全部やり遂げる酷い(けど最高な)映画です。いかにも成金、粗野で粗暴で下品な主人公トニー・モンタナの生き方は、最低すぎるにも関わらず何故か無性に惹かれてしまう魔力を秘めています。それにしても、この頃のアル・パチーノは震えるほどにカッコいい。

オススメ度-★★★★★

悪趣味度-★★★★★

演出の凝り具合(しつこさ)-★★★☆☆

作品の完成度-★★★★☆

 

 

その⑥「アンタッチャブル(1987)」

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同名のテレビシリーズを映画化した、デ・パルマ作品きっての優等生。デ・パルマらしい変態性や、演出のしつこさを極力抑え、男たちの熱い友情、そして胸躍るドラマを職人仕事で見事に描き切った本作は、アカデミー賞において4部門にノミネートされ、内助演男優賞ショーン・コネリーが受賞するなど、アメリカの賞レースとは無縁なデ・パルマ作品としては異例の快挙を成し遂げました。この映画で一躍巨匠のレールに乗りかけるデ・パルマでしたが、この後再びこだわり映画を連発したお陰で、無事にB級監督の地位に帰還します。

オススメ度-★★★★★

悪趣味度-★☆☆☆☆

演出の凝り具合(しつこさ)-★★☆☆☆

作品の完成度-★★★★★

 

その⑦「カリートの道(1993)」

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デ・パルマが最後の輝きを見せた(あくまで個人的な見解)ギャング映画の傑作。かつて麻薬王として裏の世界でブイブイ言わせた大物ギャングカリート・ブリガンテ。もう暴力の世界から足を洗うと決めたにも関わらず、それでも付き纏い離してくれない闇と病み。デ・パルマが持つ暴力性、負け犬賛歌、映像へのこだわり。そして破滅の美学が最高の塩梅でブレンドされた、枯れた魅力迸る傑作ギャング映画です。キャストといい設定といい、スカーフェイスのトニー・モンタナのIFストーリー的な本作ですが、結局辿る末路は…

オススメ度-★★★★★

悪趣味度-★★★☆☆

演出の凝り具合(しつこさ)-★★★☆☆

作品の完成度-★★★★☆

 

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「あれ…俺の紹介は…?」

はい、そんな感じで、独断と偏見に基づく「とりあえずこれだけは見とけ」作品計7本でした。手っ取り早く代表作だけ抑えたいという人は、この辺りを見ておけば間違いないと思います。ちなみにある意味一番の代表作ともいえる「ミッション:インポッシブル」に関しては、どうせ皆言われなくても自然と見ているだろうという想像の元、ここでは敢えて外しました。(アンタッチャブル以上にデ・パルマが雇われ職人に徹しているのも個人的にはマイナスポイント)。

『おわりに』

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デ・パルマ、それは偉大なるサスペンスの帝王、ヒッチコックの正統後継者にして、バイオレンス・変態映画の巨匠。かつてスピルバーグ、ルーカス、コッポラ、そしてスコセッシらと肩を並べる存在であった彼は、名だたる巨匠と共にアメリカ映画界を席巻し、ハリウッドの顔役としてその頂きに永遠に君臨するはずでした。しかし、ゴミ映画や変態映画を量産しまくり、挙句の果てには大作映画を大コケさせたことで、ハリウッドから追放されます。

傑作を撮ったらすぐ調子に乗り、「しつこい」映画を嫌がらせのように作り続けるその姿勢。評判が悪いと分かっていても、懲りずに下品・残酷描写を描き続けるタチの悪さ。実力はあるのに品がない、巨匠であるのに庶民的。

自分のやりたいことをとことん追求し、叩かれ殺されかけてもタダでは起きない彼の背中は、まるでスカーフェイスのトニー・モンタナそのものと言えるでしょう。自分の映画をこき下ろす批評家、観客に対してデ・パルマは叫びます

俺を殺りたきゃ軍隊を連れてきな おれはトニーモンタナ(ブライアン・デ・パルマ)だ!

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モンタージュの帝王クエンティン・タランティーノは、映画監督そのものにハマったのはデ・パルマが初めてだったと語ります。彼の生み出した数々の演出、バイオレンス、そして変態性は、ハリウッドで第一線を張る、現代の巨匠たちにも脈々と受け継がれました。デ・パルマは、本当に偉大な映画監督なんです。変態だけど。

尺の都合上、ここでは紹介しきれなかった(しつこすぎる)代表作・珍作も、いずれ紹介できればいいなと思ってます。それではまた。

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傑作だけ見て終わらせるなんて、もったいない!

 

余談

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2012年の「パッション」を最後に引退したと思われていたデ・パルマですが、なんと来月に新作が公開されます。ひえ〜!こりゃー見るしかないですね。

オールタイムベスト10選

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ブログが開設一周年を迎えました。

記念に私の好きな映画オールタイムベスト10選でもやりたいと思います。ちなみにあくまで「」なので、ランキングではありません。というわけでいってみよう。

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※この記事の所要時間はおよそ3分です

 

その①「不思議の国のアリス

1951年 監督:クライド・ジェロミニ他

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はい、いきなりアニメです。先行きが不安になりますが、私にとって最も好きな映画、及びアニメーションは、このディズニーのアリスと言っても過言ではありません。

そのキャッチーで可愛いビジュアルとは裏原に、全編で繰り広げられるシュールでブラックな展開のオンパレードや、登場人物たちのエキセントリックな言動には頭をクラクラさせられます。私は基本的に、夢と現実がごっちゃになった話が大好きです。

夢の不条理さ、人間の意味不明さを、高い技術でもって見事にアニメーション化した当時のディズニーはやはりすごかった。ちなみに公開当時の評価は散々で、再評価されたのは70年代に入ってからだそう。

 

 

その②「ミツバチのささやき

1973年 監督:ビクトル・エリセ

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カルロス・サウラと並ぶスペインの巨匠、ビクトル・エリセが撮った静かなる反戦映画。内戦で分断された当時の市民たちの思想、声、そして眼差しが、ヒロイン・アナの目を通して美しくも残酷に描かれます。以前ブログで紹介した際「トトロに影響を与えている」と言いましたが、デルトロの「パンズラビリンス」にも非常に強い影響を与えています。というか、まんまですね。

 

 

その③「アマルコルド 」

1973年 監督:フェデリコ・フェリーニ 

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都市、芸術、狂騒、女、そして人生。フェリーニのそれまでが全て詰まった集大成的傑作。この映画を初めて劇場で鑑賞した時はたまげました。観終わって自分が映画の住人の一人になっていることに気が付いたからです。フェリーニの故郷リミニで繰り広げられる楽しくも切ない群像劇は、全ての人を温かく迎え入れてくれます。ちなみに「アマルコルド 」とは、リミニで昔使われていた方言「エム・アマルコルド 」の鈍りで、その意味するところは「私は覚えている」フェリーニもにくいタイトル付けますね。

 

 

その④「ゾンビ」

1978年 監督:ジョージ・A・ロメロ

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全てのゾンビの父、ジョージ・A・ロメロが送り出すゾンビサーガ第二弾。前作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」もゾンビ史的には十分な革命でしたが、二度目のロメロもやはり凄かった。ショッピングモールでの篭城戦、サヴィーニによる特殊メイク、そして消費社会の風刺など、その革新性と普遍性は後のゾンビ作品に大きな影響を与えました。途中出てくる謎の坊さんゾンビがお気に入りです。

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こいつ

 

 

その⑤「ビッグ・リボウスキ

1998年 監督:イーサン&ジョエル・コーエン

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コーエン兄弟の残酷じゃない方の傑作。とはいえ、作中に登場するキャラクターの背景や事の顛末を考えれば、色んな意味で残酷なんですけども。「残酷なものをコメディにする」というのは、チャップリンがよくやる手法ですね。この映画の影響で酒(白いカクテル)とボーリングが無性に恋しくなりました。まあ、どっちも苦手(ヘタクソ)なんですけど。

 

 

その⑥「欲望」

1966年 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ

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出ました。トンデモ邦題でお馴染みアントニオーニの「欲望」です。どうやったら「BLOWーUP(現像・引き延ばし)」が“欲望”になるのか、全くもって謎です。さておき、内容はやはり最高で、アントニオーニらしい現代人風刺と、消費社会の馬鹿馬鹿しさがシュールに描かれています。良いと思って信じていたものが、次の瞬間すぐゴミになる。これぞ正しく、現代社会。ちなみにこの映画をモロにパクって(オマージュともいう)生まれたのが、かの「ミッドナイト・クロス」です。

 

 

その⑦「話の話」

1979年 監督:ユーリー・ノルシュテイン

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はい、またアニメです。ソ連が生んだ世界最高のアニメーション作家、ユーリー・ノルシュテインの集大成にして、自身の原点に立ち返った芸術作品。ノルシュテインの子供時代が色濃く反映されたその内容は、当時のソ連の厳しさ、冷たさ、そして温かさを、美しい映像と音楽でもって回顧的かつ寓話的に語りかけます。恐らくこれまでも、そしてこれからも、アニメーションでこれ以上の芸術作品は生まれないことでしょう。

 

 

その⑧「ホーリー・マウンテン

1973年 監督:アレハンドロ・ホドロフスキー

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普段映画を見ない友人に勧めたら、ほぼ確実に感性を疑われる(もしくは心配される)系映画筆頭の前衛作品。複製され、大量生産される現代の神。そして、そんな偽りの神を崇め奉る愚者たち。選ばれし特別なものたちが、不老不死に至るまでの旅路を描いた、何とも胡散臭い話なんですが、そのオチも含めて、やはりホドロフスキーは只者じゃありません。オウムは恐らくこの映画を間違った解釈でもって犯罪集団と化したんじゃないかと思います。

 

 

その⑨「ざくろの色」

1969年 監督:セルゲイ・パラジャーノフ

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パラジャーノフの映画はやはり、その色彩感覚と美術、そしてカメラワークが圧倒的で素晴らしい。どの映画も基本、ロミオとジュリエット的な身分格差が生んだ悲劇が基本となっていますが、この映画ではすれ違う恋人二人の様子を文字通り「絶対に一緒の画面に映さない」ことで表現してます。どんな頭してればこんな発想が浮かんでくるんでしょうか。天才的です。

 

 

その⑩「HANAーBI」

1997年 監督:北野武

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「あの夏、一番静かな海。」で見せた美しくも儚い愛の姿、「ソナチネ」で繰り広げられた狂気と暴走。それまでのキタノ映画の全てが詰まった、集大成的映画にして傑作。北野武を筆頭に、脇を固める役者の演技、久石譲の音楽、そしてキタノブルーなど、まさに奇跡のような映画です。人とは、愛とは、こんなにも素晴らしく、そして重い。

 

 

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以上、オールタイムベスト10選でした。以前好きな映画監督10選 - その辺の趣味ブログをやりましたが、それとは全然違う内容になってますね。好みの監督と好みの作品が、必ずしも一致する訳では無いのが映画の不思議なところです。

誰しも10年前のオールタイムベストが今と全く違うように、恐らく10年後はまた違う結果になっているんじゃないでしょうか。ベストなんてものは、極論その日ごとに変わる気分みたいなものですから。それではまた。

好きな映画『フレデリック・バック作品集』

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好きな映画の紹介でも。今回はカナダアニメーションの巨匠フレデリック・バックの諸作品を集めた「フレデリック・バック作品集

自然、科学、発展、欲望、そして人間。時代の潮流を描き続け、現代社会の本質を赤裸々に暴いた厳しくも温かいバックの世界。以下はあらすじ。

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荒れ果てた大地にたった一人で黙々と木を植えつづける男を描いた『木を植えた男』、一脚のロッキングチェアが辿る運命を通してケベックの文化や現代文明批判までを描いた『クラック!』。生涯で2度アカデミー賞短編アニメーション賞に輝くカナダアニメーションの偉大なる巨匠フレデリック・バックスタジオジブリ高畑勲監督、宮崎駿監督にも深く影響を与えた、稀代のアニメーション作家の珠玉の9篇を収録した作品集。

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スタジオジブリの協賛により、日本で個展が開かれたことでも有名な芸術家フレデリック・バック。自然に対する敬愛が強く現れた彼の作品の数々は、印象派絵画さながらの色合いの柔らかさ、美しさでもって観る者の心を強く捉える。

40歳を過ぎてからアニメーションの世界に参入したバックは、アニメーターとしては遅咲きながらも、その革新的かつ衝撃的な技法で世界の度肝を抜いた。印象派絵画がそのまま動き出すという、およそ分業制ではなし得ない芸術作品をたった一人で作り上げたバックは、高畑勲、アレクサンドル・ペトロフなど世界の巨匠に大きな影響を与え、アニメーションにおける表現の幅を一段階上げることに一役買った。

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また、レッドブルのCMアニメーションでお馴染みのクリエイター古川タクの世界観も、元を辿ればその源流はバックからきているのだから、バックの世界は日本人にとっても馴染み深いものと言えるだろう。

バック作品の見所は、その縦横無尽なカメラワークや、可愛らしい絵柄、豊かな色彩等無数にあるが、その作品一つ一つに込められた自然と科学の対比、そして、移りゆく時の中で繰り広げられる人間と時代の変化の模様は、発展による成長の限界を迎えた現代社会だからこそ、今再び注目すべき内容に満ちている。

死ぬまでに一度は見るべき、至高の芸術アニメーション。

木を植えた男/フレデリック・バック作品集 [DVD]

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好きな映画『リトル・ミス・サンシャイン』

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好きな映画の紹介でも。今回はジョナサン・デイトンヴァレリー・ファリス夫婦の監督デビュー作「リトル・ミス・サンシャイン

自己啓発に夢中なダメ親父、下ネタと憎まれ口ばかり叩くエロジジイ、半分引きこもり気味な無口なクソガキ、そして、自殺未遂したゲイの叔父。勝ち組ロードに乗りたい負け犬ファミリー、虎舞竜だらけの珍道中をひた走る。以下はあらすじ。

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小太りの眼鏡っ子、オリーヴの夢は美少女コンテストで優勝すること。運良く地方予選で繰り上げ優勝した彼女は、独自の成功論に取りつかれる父リチャードや、母のシェリル、自殺を図ったゲイの伯父フランクらと車で決勝大会の会場を目指す。だが、個性豊かすぎる家族たちはそれぞれてんでバラバラ。何をするにもまとまりが無く…

今から13年前の夏、アメリカの映画館は莫大な予算をかけたアクション超大作に席巻された。「X-MEN:ファイナルディシジョン」「スーパーマン リターンズ」共に製作費は2億ドルをゆうに超える、子供向けの大作映画ばかりが軒を連ねる中、製作費たったの800万ドルのインディペンデント映画「リトル・ミス・サンシャイン」はひっそりと公開された。

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有名スター、なし。監督の実績、なし。公開前の注目度、なし。だが、徐々に口コミでその評判が広まるや、中高年たちから厚い支持を獲得し、結果的に3ヶ月ものロングランを続ける。最終的な売り上げに関しては、製作費の6倍の5千万ドルを稼ぎ出し、仕舞いにはアカデミー賞では脚本賞助演男優賞を受賞する快挙を達成してしまう。

そんなシンデレラストーリーなバックグラウンドを持つ本作の主人公は、ニューメキシコに住む7歳の少女オリーヴちゃん。夢にまで見た美少女コンテスト「リトル・ミス・サンシャイン」に出場したい彼女は、クセが強すぎる家族と共に、オンボロマイクロバスに乗って800マイルの旅に出る。

マリファナの吸い過ぎで老人ホームを追い出されたおじいちゃん。ニーチェの超人思想にかぶれて、他人を見下し誰とも口をきかない長男。ゲイの彼氏にふられて死にそうな叔父さん。何かと「金持ちになる方法」ばかり口にするアヤシイセミナーの講師のパパ。そんな負け犬だらけの家族の世話で、もうクタクタに疲れてるママ。

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コンテスト会場のカリフォルニアに向かう一家だったが、道中ヴァンのクラッチイカれてしまい、押しがけしないと走れない状態に陥ってしまう。ここで諦めることも出来なくはないが、勝ち組に拘るパパ、ママ、そしておじいちゃんは決して諦めない。可愛い末っ子オリーヴのために、家族は文字通り一丸となって車を押し押しハイウェイを走る。この、家族のために皆で団結する姿がとても良い。これぞまさに、ファミリー映画だ。

長い旅の末、念願の目的地に着いた家族は、そこでアメリカの現実とも呼べる光景を目にする。派手に着飾り、所作もメイクもバッチリな女の子たち。そして、そんな女の子たちに付き添ういかにも裕福そうな保護者軍団。ちょっとおデブで芋臭いオリーヴは、誰の目にも到底勝てそうには見えない。

審査員も観客も、求めているのは分かりやすく目に留まりやすい「アメリカの美」。人工的で偽善的なアメリカン・ビューティだ。純心で可愛い妹の姿を傍目に、長男は怒りを露わにコンテストの辞退を母親に迫る。

オリーヴをこんなところに出したくない!アメリカそのものがミスコンなんだ。そして僕らはみんな敗者だ!

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アメリカとは、人生とは、社会とは、美とは。誰かの価値観によって決められたものなど、所詮誰かにとっての物差しでしかない。ナンバーワンよりオンリーワン。もはや使い古されすぎたこのキラーワードは、しかし人生における真理でもある。

ラストシーン、とびっきりの笑顔とダンスを観客席に届けるオリーヴ。彼女こそ、金や基準に惑わされない、本当のリトル・ミス・サンシャインだ!

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【余談】

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ボケた老人、ダメなオヤジ、そして女の子の旅を描いた「ローガン」は、旅の場面に関して本作を参考にしたと監督のジェームズ・マンゴールドは語っている。かつて見向きもされなかったビッグバジェットX-MENに、影響を与えた小さなサンシャインことオリーヴ。家族の勝利!