ある保育士の趣味ブログ

主に映画の話しかしません。

好きな映画『要塞警察』

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好きな映画の紹介でも。今回はジョン・カーペンターの「要塞警察

ハワード・ホークスの西部劇「リオ・ブラボー」を下敷きに、独自のアレンジとホラー要素を加えた籠城映画の傑作。以下はあらすじ。

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ストリートギャングに命を狙われている男が引越し作業中の警察署に逃げ込んできた。武装した追っ手はあっという間に建物を包囲。人員や武器弾薬もわずかな警察署は外部との通信手段も遮断され、孤立無援状態に。警部補のイーサンは獄中の犯罪者ナポレオンと組み、署内に立てこもって敵と戦うが……。

銃に消音装置を装着し、音もなく不気味に忍び寄る謎のストリートギャングたち。それに立ち向かうは、移転作業でたまたま居合わせた警部補、女性事務員、そして囚人の二人。烏合の衆であるはずのこの四人は、壮絶なる修羅場を潜り抜ける内に、次第に犯罪者と警官の垣根を越えた奇妙な連帯感が生まれていき…

カーペンターにとって(商業映画としての)デビュー作となったこの「要塞警察」は、舞台設定を警察署内に絞ることや、テロリスト全員に消音装置を着けさせ火薬の量を最小限に抑えるなど、低予算を逆手に取った秀逸なアイディアが随所で光るアクション映画の傑作だ。劇伴は監督自らが手がけており、不気味な敵と差し迫った状況を、独特の浮遊感漂うシンセサイザーの音がヒリヒリと盛り上げていく。

火急の事態とあっては、例え犯罪者の手であっても借りざるを得ないという状況設定や、謎多きカリスマ、ナポレオン・ウィルソンのキャラクター造形などは、後の傑作「ニューヨーク1997」の原型ともなっている。

無慈悲に子供を撃ち殺し、感情もなく襲い来るテロリストの姿はなかなかに恐ろしく、カーペンターのホラー演出の上手さが際立つものの、外の様子を見に行く順番をジャンケンで決めたり、敵がゾンビのようにモタモタノロノロしていたりと、シュールな笑いどころも本作の魅力の一つなので、是非注目してもらいたい。

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好きな映画『マイマイ新子と千年の魔法』

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好きな映画の紹介でも。今回は片渕須直監督の「マイマイ新子と千年の魔法

ミリタリーアクションから児童文学まで、幅広い芸風を持つ元ジブリ出身の秀才、片渕監督が送るある視点(子供)の物語。以下はあらすじ。

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小学3年生の新子は、山口県の片田舎に住む普通の女の子。友だちや家族に囲まれ、この町にあった平安時代の地方の国の都「国衙」について空想することが好きだった。そんなある日、東京から貴伊子という生徒が転校してくる。貴伊子が気になった新子は、次第に親しくなっていくが……。

空想好きの祖父の影響を一身に受ける平凡な女の子新子は、畑や山に繰り出しては目に見えない空想の友達相手に競争をしたり、睨めっこをしたりと毎日大忙し。タイトルに「魔法」と付いているために、ファンタジー作品よろしく魔法や奇跡が登場するかと思いきや、本作にそれらの類は一切絡んでこない。新子が見て、聞いて、感じる不思議な世界は、かつて誰もが持っていた「子供の視点」を通して描かれたものだ。

日本アニメーション界の巨匠、高畑勲の元で助手を務めた経験もある片渕監督が本作で目指したものは、師である高畑監督の「おもひでぽろぽろ」や「赤毛のアン」で描かれた「自然」と「自分探し(回帰)」。東京から越してきた内向的な女の子貴伊子は、活発で想像力豊かな新子と共に過ごすうちに、子供だけが持つ想像の力「マイマイ」を発現し、子供の世界を取り戻していく。だが、重い現実がのしかかることで、楽しい世界にも影が指し…

大好きな世界が「大人の都合」で壊されていく様子や、それでもひたむきに明日へ向かおうとする主人公たちの姿は、片渕作品共通のテーマであり、空想の素晴らしさと現実の厳しさを交互に描いた本作の内容は、次作の「この世界の片隅に」にも通じている。

念密な取材と研究によって描き出されるリアリズム、空想と現実を織り交ぜた作劇術。スタジオジブリが解散となった今、最もジブリの魂を引き継ぎ、高畑イズムを実践せんとする作家は、片渕須直監督を置いて他にいない。作品が完成した後、この映画を見た故・高畑勲監督は、何も言わずに片渕監督の肩を叩いたという。その胸中にあったのは、自分の後継者を見届けた喜びだったのか、それとも別の何かだったのか。

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好きな映画『ビヨンド』

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好きな映画の紹介でも。今回はルチオ・フルチの「ビヨンド

ジャーロ・ホラー映画における変態爺ことルチオ・フルチが送る、意味不明映画の極北。以下はあらすじ。

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1927年。ルイジアナ州にある「セブン・ドアーズ・ホテル」に滞在していた画家シュワイクが、怪奇現象が発生した原因と見做され村人たちの襲撃を受け、凄惨なリンチの後に処刑された。それから54年後。叔父の遺産として、閉鎖されていたセブン・ドアーズ・ホテルを相続したライザは、営業再開に向けて改修工事を進めていた。しかし、塗装工が原因不明の転落事故に遭って重傷を負ったのを皮切りに、ライザにホテルから去るように警告する盲目の女性が現れるなどの奇妙な出来事が相次ぎ…

通俗性、娯楽性、普遍性の一切を抜きに、ひたすら残酷趣味丸出しな最低映画ばかりを世に送り出す、イタリアの変態爺ことルチオ・フルチの代表作にして傑作。口から内臓をボトボト滴らせたり、電動ドリルで頭に穴を穿ったりと、自分のやりたいシチュエーションを優先するあまり、物語の筋が破綻寸前な「地獄の門」や「サンゲリア」のごとく、本作においてフルチがやりたかったことは相変わらず「美女を徹底的に虐め抜く」だけという、非常に悪趣味かつ残酷な内容と化している。

「何かは分からないが、とにかく良くないことが起こりそう」という大筋や、理由もなく唐突に出てくるゾンビ軍団、そして理解不能なラスト等は、まんま「地獄の門」の焼き直しと言っても差し支えないが、その突き抜け具合や意味不明さは随一と言える。「悪(残酷)趣味も、行けるところまで行ってしまえば芸術」という、フルチの美学が香り立つ最低映画の最高峰。

好きな映画『ピープルVSジョージ・ルーカス』

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好きな映画の紹介でも。今回はアレクサンドレ・O・フィリップのドキュメンタリー映画ピープルVSジョージ・ルーカス

監督ジョージ・ルーカスが生み出した史上最大のカルト映画、「スターウォーズ」を巡る、ファンと神(ルーカス)との壮絶なる闘いの記録。その作品(SW)は、一体誰のものなのか?以下はあらすじ。

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スター・ウォーズ』それは1970年から1980年代にかけて、ジョージ・ルーカスが発表した伝説のSF映画シリーズ。誰もが熱狂した最初の3部作は、圧倒的な賛辞によって「聖典」と化し、やがて映画は新しいアメリカ文化ともいうべき大々的ムーブメントを各地で巻き起こす。だが、特別篇と新3部作の話になると、コアなファンたちの態度は手の平を返したように冷たくなるケースも出てきて……。

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「遠い昔、遥か彼方の銀河系」を舞台にしたSF映画スターウォーズ」は、1977年に1作目のEP4「新たなる希望」が公開されるや世界中で一大ムーブメントを巻き起こした。その後に続くEP5・6は、更なる熱狂を持ってファンに迎えられたものの、97年に製作された「特別編」の公開や、過去編を描いた完全新作EP1〜3の公開は、ファンと神(ルーカス)との間で大きな隔たりを生むこととなる。

まず特別編について説明をしておくと、特別編とは、EP4~6の技術的に至らない部分を修正するべくルーカス自らの手で再編集が加えられたバージョンのことで、本来の製作意図に一層近づいた形にするべく、光学合成シーンのデジタル合成によるやり直しや、再撮影及びCGによるシーンの追加が行われた。この特別編における数多くの変更は、オリジナル版を擦り切れるほど見てきた旧来のファンから非常に不評で、特にEP4における「ハン・ソロがグリードを撃ち殺すシーン」に対しては、「キャラクターの性格まで歪めている!」と多くの非難が集中した。

この特別編に対するファンの怒りは、「特別編こそオリジナル版」と言い張り、以後映像ソフトで「オリジナル版(公開版)」の販売を封印してしまったことで更に加熱していく。加えて、後に公開された新作EP1「ファントム・メナス」の出来に「期待を裏切られた」と嘆く多くのファンは、ついにジョージ・ルーカスに対する怒りを爆発させ、「プリクエル(1、2、3)は存在しない」と言わせるほどに大きな失望と反感を買ってしまうのだった。

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監督の手から離れ、多くのファンにとってのアイコン的存在、または神話となったスターウォーズ。その聖典とも呼ぶべきシリーズ作品に、自らの手で修正を加えていくルーカス。その作品は、果たして誰のものなのか?

スターウォーズファンとルーカスの変化を描いた秀作ドキュメンタリー。これを見ずして、スターウォーズの歴史は語れない。

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好きな映画『ターミネーター』

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好きな映画の紹介でも。今回はジェームズ・キャメロンの「ターミネーター

主演のシュワルツェネッガー、そしてキャメロンにとっての出世作であり、後に続く大ヒットシリーズの記念すべき第1作目。以下はあらすじ。

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核戦争が勃発した近未来、機械軍は人類のリーダーであるジョン・コナーを歴史から消すべく、1984年のロスへ冷徹無比の殺人機ターミネーターを送り込んだ。目的は、いずれジョンを産むことになるサラ・コナーの抹殺。平凡な女子学生であるサラの前に姿を見せる黒づくめの殺人機。だがその時、彼女を守るために一人の男が現れた。男の名はカイル・リース。ジョン・コナーの命を受け、未来からやって来た戦士であった。

ロジャー・コーマンの映画帝国で下積みを積んだ後、監督デビュー作「殺人魚フライングキラー」を世に送り出した新人キャメロンは、人生のドン底にいた。降板したチャールズ・イグリーに代わり、殺人魚を監督した彼に待ち受けていたのは、崩壊した脚本に崩壊した現場、そしてプロデューサーのアソニティスによる無慈悲なクビ宣告という最悪の結末だった。

「ハク付のためにアメリカ人の名前をクレジットしたかっただけ」という身勝手な理由で、現場に入ってからたった5日で降板させられたことに腹を立てたキャメロンは、アソニティスがいるローマへ渡航し、映画からクレジットを外すよう直談判したものの、願いは聞き届けられず追い出されてしまう。その上、食当たりによる高熱で連日連夜ホテルのベッドでのたうちまわるという地獄のような状況も重なり、ついには悪夢にうなされ心身共に憔悴しきるのだった。

この時に見た、「炎の中から現れる金属製のガイコツに延々追いかけ回される」という悪夢こそ、ターミネーターの原案となったアイディアの出発点だ。映画製作期間中、ターミネーター役の交代劇(当初はランス・ヘンリクセンの予定だった)や、役者の負傷、3ヶ月かけて準備した特撮シーンの失敗等々、想定外の出来事が次々と発生する事態に見舞われたものの、「雪辱を果たす」という執念でなんとか期間内に完成させ、結果として制作費の640万ドルに対し全世界で7800万ドルを稼ぐという大ヒットを記録した。

この作品の成功で完全復活を遂げたキャメロンは、この後「エイリアン2 」「ターミネーター2 」「タイタニック」と次々に傑作を生み出し、巨匠への階段を駆け上っていくこととなる。

好きな映画『AKIRA』

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好きな映画の紹介でも。今回は大友克洋の「AKIRA

漫画とアニメーション、二つの分野で天才の名を欲しいままにし、その後のカルチャー文化を変えてしまった時代の革命児こと、大友克洋が送るサイバーパンクアニメ。以下はあらすじ。

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2019年、ネオ東京。金田をリーダーとするバイクの一団は進入禁止の高速道を疾走していた。しかし、先頭にいた島鉄雄は突然視界に入った奇妙な小男をよけきれずに転倒、負傷する。小男と鉄雄は直ちに現れたアーミーのヘリに収容され飛び去ってしまった。翌日、鉄雄を捜す金田は、少女ケイと出会う。彼女は反政府ゲリラの一員で“アキラ”という存在を追っていた。その頃、鉄雄はアーミーのラボで強力なクスリを連続投与され、不思議な力を覚醒し始めていた…。

講談社の週刊ヤングマガジンにて1982年〜1990年にかけて連載された同名漫画「AKIRA」を、作者である大友克洋自らが監督し、劇場アニメ化した大作映画。漫画とアニメ、二足の草鞋を巧みに履きこなし、尚且つ一流の原画マンすら驚かせる秀逸な原画を描ける作家というのは、日本では宮崎駿今敏、そして大友克洋の3人くらいだろう。

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漫画「AKIRA」の登場がもたらした影響は数知れず、特にその緻密かつリアルな作画は、後の漫画カルチャーやアニメーションに大きな衝撃を与え、数多くの大友フォロワーを生むこととなった。そして、アニメ化された劇場版は、当時としては破格の制作費10億円と、総作画枚数15万枚という、途方も無い手間と苦労の末に完成に至り、ジャパニメーションの金字塔として今なお多くの人間を取り込み続けている。

この作画枚数15万枚という数字がどれだけ凄いのかを説明すると、ほぼ同じ時期に公開された劇場アニメである「天空の城ラピュタ」の凡そ2倍、「となりのトトロ」に至っては凡そ3倍の枚数となる。しかも、デザインや背景、小物に至るまで、全てがリアリティ溢れる緻密な作画によって行われているのだから、普通のアニメを作るのとは要求される技術も手間も段違いだ。

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本作以降、脚本・企画・オムニバスと、精力的にアニメーションの世界に参入していくことになる大友克洋だが、本作の翌年に公開されたオムニバス映画「迷宮物語」内の短編(工事中止命令)は、お得意のスチームパンク節全開かつ非常に高いクオリティとなっているので、AKIRA的な世界観が好きな人には必見の内容となっている。

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好きな映画『狼よさらば』

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好きな映画の紹介でも。今回はチャールズ・ブロンソンの代表作「狼よさらば

それまで西部劇や戦争ものが主戦場であったブロンソンが挑んだ新境地にしてリベンジャー映画の名作。以下はあらすじ。

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ニューヨークの不動産会社で会社員を務める初老の中年ポール・カージー。ある日彼のもとに1本の電話が入る。それは、妻と娘が暴漢に襲われ、病院に運び込まれたという信じられない知らせだった。急いで病院に駆けつけるも、妻は死亡し、娘は暴行された際のショックで精神薄弱状態に。憤りと悲しみに打ちひしがれるポールだったが、ひょんなことから銃を手に入れるや、鬱憤を晴らすかのように公園で襲いかかってきたチンピラを射殺。これをきっかけに、沈鬱な状態が吹っ切れ、次々とチンピラたちを仕留めてハンターと化していくポールだが…。

舞台にもなっている70年代当時のニューヨークは、警察組織の腐敗によって治安が無法地帯と化していて、殺人・強盗発生件数も全米の中で群を抜く高さだったという。特に、ブロンクス地区を走る地下鉄構内は「一度入れば無事には出られない」と言われるほど、犯罪の温床となっていたらしい。

ブライアン・ガーフィールドの社会派小説「狼よさらば(原題Death Wish)」を原作とするこの映画は、74年にアメリカで公開されるや大衆からの支持を獲得し、大ヒットを記録したのだが、同時に内容を巡って大論争を巻き起こした。というのも、ポールが行う「私刑(処刑)」行為の犠牲者たちは、その殆どがポールに直接被害を及ぼしたわけではない、通りすがりのチンピラに過ぎないからだ。

しかし、何もしない警察に変わって、犯罪者を血祭りにあげるポールは、次第に大衆からヒーローとして祭り上げられていく。一方警察は、「逮捕すればますます市民から反感を買う」という理由から、処刑を行うポールに対して迂闊に手を出すことができない。この辺りの脚本の上手さは中々に素晴らしいのだが、この映画はその結末に関して、ある問題が存在している。

自警意識の暴走の末に破滅していく原作の内容に対して、主人公が生き残り街を去るように設定を変えてしまった映画版は、ポール・カージーというキャラクターが「ダークヒーロー」のように映ってしまい、結果として、このカージーの自警行為を真似た模倣犯が現実にも出現してしまった。

映画はその後5作目まで続編が作られ、処刑人カージーのイメージは更に定着していくこととなる。

狼よさらば (1974年) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

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