好きな映画を紹介します。今回はベニチオ・デル・トロ主演、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作のクライムサスペンス映画「ボーダーライン」です。
すごいですね。「ベニチオ・デル・トロ」「ドゥニ・ヴィルヌーヴ」思わず舌を噛みそうな言いにくい名前ですが、私はどちらも大好きです。ちなみに共演者はエミリー・ブラント、そしてジョシュ・ブローリン。あ、こっちは比較的言いやすい。
主要人物の三人。真ん中が件のベニチオさん。
そんなインパクト抜群な名前が揃うこのボーダーラインですが、この映画はとにかく、「怖い」です。
なんだか前回も怖い映画を紹介したような気がしますけど、今回の映画は「怖いけど実は…」といった裏テーマ、教訓のようなものは特に存在しません。ただ、映画を通して突きつけられる裏の世界には、ひたすらに恐怖を覚えることでしょう。
世の中には、知らない方が幸せなこともある…。
1泊2日、闇の社会科見学地獄めぐりの巻。そんな感じで以下はあらすじ。
優秀なFBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)は、メキシコ麻薬カルテルの全滅を目的とした部隊に入り、特別捜査官(ジョシュ・ブローリン)のもとで極秘任務に就く。ケイトは早速、謎めいたコロンビア人(ベニチオ・デル・トロ)と共に国境付近の捜査を開始するのだが、人が次々と亡くなる現実を前に、ケイトの中で善悪の境界線(ボーダーライン)が揺らぎはじめる……。
とまあ、こんな感じです。この映画は不法移民問題でしょっちゅうお隣(アメリカ)と揉めてる国ことメキシコが舞台。メキシコといえば、なんとなく「治安が悪そうだなぁ」というイメージを持っている人も多いと思いますが、その通りです。
それで、具体的にはどれぐらい「治安が悪い」と思います?え、深夜の歌舞伎町くらい?ああ〜、なるほどなるほど。
Citizens' Council for Public Securityが2017年に発表した『世界で最も危険な都市ランキング』によると、ランキングに掲載された50都市のうち、メキシコの都市は12箇所もランクインしたそうです。全体の1/5をメキシコだけで占めるわけですから、これはちょっと穏やかとは言えません。(※このランキングは紛争地帯や集計不能地帯は含まれていないものです)。
具体的な数字をあげていきましょう。
メキシコの代表紙『Excelsior』の発表によれば、2007年~2016年までにメキシコ国内で殺害された若者の数は男性4万1296人、女性5445人。年間平均5500人以上の若者が麻薬カルテルの人間によって殺されています。
ちなみに、過去最多の殺人件数が記録されたのは2017年で、その数2万5339件。毎年平均1万8000〜2万件の殺人事件がメキシコでは発生しています。
世界規模で見た場合、殺人発生率は22位/200ヶ国(日本は197位)で、人口10万人あたり、約19人が殺人によって亡くなっている計算です。発生件数5位ジャマイカの40人に比べれば凡そ半分ですが、日本の0.3人に比べると凡そ66倍となります。
といった具合で、数字だけ見ればメキシコは日本と比べて約66倍の確率で殺人が発生する危険性がある国ということになりますね。アメリカは凡そ4倍くらいなので、かなり異常な数字であると言えるでしょう。
しかしこれはあくまで特に危険な地域の話であって、メキシコ政府曰く、「狙われるのは主にカルテルと抗争している人間だけであり、観光地などで観光客が狙われることはまずない」とのこと。
実際のところ、外国人観光客が殺害されるという事件は滅多に発生しないようで、観光客が集まるカンクン、メキシコシティなど主要観光地における殺人発生率は、危険地域に比べれば半分以下に下がるといいます。
全体として統計すると、日本の66倍危険とされるメキシコですが、わざわざ危険な地域に足を踏み入れたりしない限り、殺人事件に巻き込まれる可能性は極めて低いみたいですね。なんだ…安全じゃん、メキシコ!
そういう奴から先に死ぬ。
「うわっ、びっくりした!?ど、どういうことですかベニシオさん!?」
ベニチオだ。
「あ、スンマセン…」
いいか、カルテルとの闘いはな、殺るか殺られるかとか、そういう話じゃないんだよ。
「は、はい?」
「殺る」か、「殺らない」か。俺たちにあるのは…ただそれだけだ。
「…はい?」
「あのー、それってどういう…?」
…………
「ちょ!?何で急に銃向けるんですかっ!危ないじゃな…!?」
まあ、そういうことだから。
「えっ」
そういうことだ。
「……………」
くにへかえるんだな。おまえにもかぞくがいるだろう…
「……あ、はい」
迂闊に首を突っ込むと死んじゃう危険地域に、ベニチオさんと一緒に研修に行ける映画、それがボーダーライン!一体どんな闇が待ち構えているのかは、是非とも自分の目で確かめてください!
現在続編も公開中。監督は変わりましたが、主演のおじさん二人は相変わらずキレキレです。