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主に映画の話しかしません。

好きな映画『野いちご』

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好きな映画の紹介でも。今回はイングマール・ベルイマンの「野いちご

黒澤明の「生きる」、フェリーニの「8 1/2」の原案ともなった回顧録映画の元祖。以下はあらすじ。

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妻に先立たれ、子どもも独り立ちしたため、家政婦と二人きりの寂しい日々を過ごしている78歳の医師イサク。名誉博士号の受賞式の前夜、死を暗示するような不吉な夢を見た彼は、予定していた飛行機ではなく、車でルンド大学へと向かおうとする。その道中、ふと青年時代の夏を過ごした屋敷へと寄り道した際、過去の記憶がくっきりとよみがえり……。

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家庭や家族を顧みず、自分の研究ばかりに没頭した老人の回顧と懺悔の物語。神と人間、奇跡と現実を巧みに描き出す巨匠イングマール・ベルイマンの3大傑作の一つにして、内省型映画の元祖でもあるこの野いちごは、1957年に公開されるや、多くの人々に驚きを与え、後の映画文化そのものに多大なる影響を及ぼした。

シュールで不気味な夢の世界。幼い頃の美しい記憶。人間が心の奥底にしまうさまざまな感情を、まるで引き出しを開けるように交互に見せる表現方法は、後に出てくる数多くの巨匠たちにとっての教科書となり、フェリーニの「8 1/2」やリンチの「イレイザーヘッド」、黒澤明の「生きる」などを誕生させた。

この映画は、その表現手法や構成の秀逸さについ目が行きがちになるものの、過去に捕らわれるだけでなく、現在にも目を向け少しだけ前に進もうとする孤独な老人イサクの小さな成長譚も見所だ。

残酷さ、無情さ漂う終幕が多いベルイマン作品にしては、珍しくハッピーエンドで終わる本作だが、この映画はベルイマンが病気療養で入院していた際に書かれた脚本を元に作られたもので、ベルイマン自身のそれまでの人生を省みた回顧録でもある。

映画監督という、人の役に立っているんだか、いないんだか、いまいち判然としない職業に身を置くベルイマンにとって、それまでの人生はイサク老人と同じように罪の意識を感じるものだったに違いない。

死ぬまでに一度は見るべき、歴史的大傑作。