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主に映画の話しかしません。

好きな映画『ブリキの太鼓』

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好きな映画の紹介でも。今回はフォルカー・シュレンドルフの「ブリキの太鼓

戦争が生み出す狂気の中で、少年は成長することを辞め、世界の傍観者と化した。1979年度カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞、アカデミー外国語映画賞を受賞した戦争映画のカルトにして大傑作。以下はあらすじ。

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ポーランドのダンチッヒで生まれた少年オスカルは、世界の理不尽さに絶望し3歳で自らの成長を止める。ナチスファシズム吹き荒れる1927年から1945年にかけての激動の時代、身体は子供でも心は大人のアンビバレンツな少年オスカルは、世界で起こる数々のグロテスクな光景を目の当たりにしていく。従兄との不倫を続ける母、臆病者の父、そして、戦争が生み出す破壊と殺戮。壊れた世界と大人たちに向けて、今日もオスカルはブリキの太鼓を打ち鳴らし、狂ったように奇声をあげる…

ドイツの作家ギュンター・グラスが1959年に発表した同名小説を原作とした戦争映画。戦争という蠱毒の中で生まれた小さな怪物オスカルは、奇声を発した際の超音波でガラスを粉々に砕ける不思議な能力の持ち主。その特異な体質と能力で、オスカルは子供のまま世を渡り歩いていくのだが、狡猾且つシニカルな目で大人たちを見下し、翻弄していくその姿はどこまでも不気味だ。

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大人たちが引き起こす戦争という名の遊戯。その参加をオスカルは断固として拒否しつつも、一方で大人の世界、大人同士が行う恋や性の営みには並々ならぬ興味を示す。「成長」という、人間が果たすべき義務や責任を放棄し、永遠に子供のままでいようとするオスカルは、子供の姿で禁断の果実に触れた罪によってか、はたまた、世界が生み出す理不尽によってか、恐ろしい罰を受けることとなる。それは、親しき者たちの死だ。

狂った世界と、狂った少年オスカル。どちらがより間違っているかは、受け手の判断によるところと言えるが、どんなに世界や個人が歪もうと、人の本質(セックスと暴力)だけは決して変わることはないというのが、皮肉でありながらも真理でもあるようで恐ろしい。

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余談ではあるが、子供の老人、絶叫とともに砕け散るガラス等、この映画は大友克洋の「AKIRA」に影響を与えている。