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主に映画の話しかしません。

好きな映画『赤ちゃん泥棒』

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好きな映画の紹介でも。今回はコーエン兄弟初期の傑作「赤ちゃん泥棒

デビュー作「ブラッド・シンプル」で見せた「噛み合わなさと残忍さ」、そして、2作目である本作の「馬鹿馬鹿しさと人間臭さ」の二本の柱は、後のコーエン作品全ての原点となった。以下はあらすじ。

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元強盗の夫ハイと元婦人警官の妻エド。子供が出来ない二人は家具王の下に生まれた5つ子の一人ネイサン・ジュニアを盗み出すが、そこに夫のムショ仲間や、賞金稼ぎの無頼漢マンハンターが入り乱れ、赤ちゃんの争奪戦が始まる…

コーエン兄弟が長編デビュー後2作目に撮った映画は、不妊症に悩む夫婦が富豪の家から子供を盗む姿をハイテンションに描いたコメディ作品。

元強盗の夫ハイは、自分にとって都合の悪い出来事が起こると、すぐに短絡的な方法で解決を試みる典型的なダメ人間。金がなければ強盗をし、赤ちゃんが出来なければ誘拐を企て、オムツがなければ万引きに走る。

そんなダメな夫に連れ添う妻エドも中々のダメ妻であり、子供欲しさに夫と共犯に及ぶのだからどうしようもない。更に、行く先がないからと二人の家に居座る元囚人仲間や、賞金を得るため手段を選ばない巨漢のハンターなど、この映画に登場するのは揃いも揃って大人になれない情けない人間たちばかり。

そんなダメな大人たちだが、可愛い赤ちゃんネイサン・ジュニアを前にしたとき、嫌が応にもお世話を迫られ、お世話を通じて一つの真実を悟ることになる。それは、ダメ人間に赤ちゃんは育てられないということだ。

社会的責任を果たせない自分たちとネイサン・ジュニアは、大きさは違えど、他者をまともに育てられないという点で似たような存在であり、当然ながら、赤ちゃん(未熟者)に赤ちゃんを育てることは叶わない。そんな当たり前のことに気がついたとき、ダメな大人たちはようやく僅かな成長を果たし、この映画は終幕を迎える。

映画の原題にもなっている「Raising Arizona(アリゾナを育てる)」は、アリゾナ夫妻から奪った赤ちゃん「ネイサン・ジュニア」のことを指しているのだが、それと同時に、舞台であるアリゾナ州ともかかるダブルミーニングにもなっている。つまり、「アリゾナを育てる」の真に意味するところは、そこに住む大人たちの成長譚にこそあるのだ。

育てているようで、実は自分も赤ちゃんに育てられているという「親あるある」を味わいつつ、ゲラゲラ笑えてちょっぴり考えさせられる傑作コメディ映画。