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主に映画の話しかしません。

好きな映画『カラスの飼育』

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好きな映画の紹介でも。今回はカルロス・サウラの「カラスの飼育

タイトルにカラスとあるものの、この映画にカラスは一切登場しない。そういう感じの不思議な映画。以下はあらすじ。

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マドリードの中心部にある古い家に住む9才の少女アナ。彼女の母は、子供の養育の為にピアニストとしての活動を断念し、不幸な晩年を迎えていた。その事が深く胸に刻みつけていたアナは、ある夜、母の幻影と対話をする。思い出と空想と現実が、アナの視線を通して交差していく中、ある日、伯母に叱られたアナは、隠し持っていた毒薬を手に取り……。

スペイン映画の巨匠、カルロス・サウラが「ミツバチのささやき」のアナ・トレントに惚れ込んで作ったラブレター的映画。夢や妖精を信じる子供のライトサイドに焦点を当てたミツバチのささやきに対し、本作では子供が持つ「純粋さゆえの残酷性」という、ダークサイドの部分を瑞々しく描いていく。

夢を諦め、家庭のために尽くした末に病気で亡くなった不幸な母。そんな母を省みず、次々と愛人を入れ替える父に対して、ある夜、アナは飲みものに“毒薬”を盛り殺害を図る。肉親がいなくなったアナと二人の姉妹は、叔母の家に引き取られ、そこで新たな生活を送ることになるものの、口うるさく叱る叔母に、アナは煩わしさを感じるのだった。

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子供というのは存外残酷なもので、力で勝ると見るや、平気で虫や草花を虐め、躊躇することなく殺してしまえる生き物。タイトルになっている「カラスの飼育」とは、スペインのことわざで「飼い犬に手を噛まれる」と同様の意味を持つ言葉で、この映画における「カラス」とは、秘密の“毒薬”を使って飼い主(保護者)に死をもたらそうとするアナのことを指している。

これだけ聞くと一見殺伐とした内容のように思えるものの、この映画は気に入らない大人を殺害する子供の姿を描いたサスペンス映画では決してない。ミツバチのささやき同様、徹底して子供の目線で世界を描いた(ある意味での)ファンタジー映画だ。

根拠の伴わない万能感、認識に対する思い違い。アナが見つめる世界の形は、かつての子供時代の記憶を思い起こさせる。