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主に映画の話しかしません。

好きな映画『海がきこえる』

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好きな映画の紹介でも。今回は望月智充監督の「海がきこえる

氷室冴子による小説を、スタジオジブリの若手集団(当時)がアニメ化した、テレビ用アニメーション作品。以下はあらすじ。

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高知の進学校から東京の大学に入学した杜崎拓は、東京都武蔵野市吉祥寺駅のホームで武藤里伽子に似た女性を見かける。その後、はじめての夏休みに同窓会のために故郷・高知へと帰省する道中、拓はその高校時代を思い起こす。季節外れに東京から転校して来た里伽子との出会い、ハワイへの修学旅行、里伽子と2人だけの東京旅行、親友と喧嘩別れした文化祭。ほろ苦い記憶をたどりながら、拓は里伽子の存在を振り返っていく…

鈴木敏夫プロデューサーが、「ジブリ史上最も予算の回収に苦労した作品」と回顧する、スタジオジブリ最初で最後のテレビアニメ。「紅の豚」公開直後、次の企画に悩んで手が空いていた若手スタッフたちに、「何か作らせよう」ということで企画が進められた本作は、そのクオリティの高さに宮崎駿監督が触発され、後に「耳をすませば」の脚本をかかせたという逸話も持つ、スタジオジブリの隠れた名作だ。

「隠れた」というのには理由が二つあって、一つはテレビ作品ということで、劇場企画ほど大々的に宣伝も行われず、知名度が今ひとつ浸透しなかったこと。もう一つは、「あの」ジブリ作品であるにも関わらず、これまでテレビで放映された回数が、(初回の1993年と17年後の2011年の)たった2回のみと極端に少ないからだ。

この放送回数の少なさは、「未成年の登場人物が作中で飲酒をする場面があるため」、「視聴率がそこまで期待できないため」など諸説あるが、本当のところは、上映時間の72分という長さが、テレビで放送するには尺が足りず枠が取りづらいことが原因だという。

といった具合で、ジブリ作品の中でもいまいち影の薄い印象を持つ本作だが、その内容に関しては文句のつけようがなく、ジブリの二大巨匠(宮崎・高畑両監督)が唯一苦手とする「若い男女の恋愛(青春)模様」を、若手らしい瑞々しさでフレッシュに描き切っている。

高知、そして東京を舞台に繰り広げられる、二人の男女のほろ苦い青春物語。東京出身のヒロイン武藤里伽子は、越してきた高知県の高校で純朴な青年杜崎拓と出会う。一見お淑やかで、成績優秀な模範生里伽子に対し、拓はほのかな憧れを抱いていくのだが、話す度に露呈していく里伽子のワガママぶりに、段々と嫌気が指し…

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本作の特筆すべき点は、上映時間が短いながらも、登場人物が抱える背景や葛藤をきっちり描き、人間関係や心の機微に説得力を持たせているところだ。人に平気で嘘をつき、悪態すら飛び出すワガママなヒロイン里伽子が、傍目に見てクズそのものであるにも関わらず、どこか捨てがたい魅力に満ちているのは、キャラクターを記号化せず、一人の人間としてしっかり描いているからに他ならない。

この作品を見た宮崎駿監督は、後に「耳をすませば」の企画を立ち上げ、脚本も自ら執筆するほど作品に熱を入れ込んだものの、公開後に行われた首都大学東京教授・宮台真司との対談において、「『耳をすませば』よりも『海がきこえる』の方がより現実的な女子中高生の描写ができている」と言及されたことで、2人の間で論争が巻き起こったとか。

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余談ではあるが、本作のヒロイン里伽子の造形は、谷川流ライトノベル涼宮ハルヒシリーズ」のヒロイン・涼宮ハルヒのキャラクターに影響を与えていて、状況設定や主人公との関係など、見比べてみると共通する部分が多く出てくる。

海がきこえる (徳間文庫)

海がきこえる (徳間文庫)

 
海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫)

海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫)