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主に映画の話しかしません。

好きな映画『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』

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好きな映画の紹介でも。今回はヴァイオレンスの帝王ポール・ヴァーホーヴェンの最高傑作「グレート・ウォリアーズ/欲望の剣

倫理、道徳、常識、ポリコレ。全てを無視して観客を欲望と暴力渦巻く狂気の世界へ叩き込む、ヴァーホーヴェンワールドの真骨頂。以下はあらすじ。

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舞台は中世ヨーロッパ。マーチンをリーダーとする傭兵軍は、仕事を成功させたにもかかわらず、王に裏切られ無報酬で追放されてしまう。彼らは復讐のため、王子の婚約者を奪い取り、城を征服する。だが、王子の軍がペストにかかった犬を、密かに城の井戸に放り込み、水を飲んだ傭兵軍は壊滅。王の軍が乗り込んで、婚約者を取り返す。マーチンは九死に一生を得て逃げ延びるが…

ヴァーホーヴェンアメリカ進出の足がかりとして世に送り出した、エログロバイオレンスとブラックユーモア満載なスペクタクル巨編。フランス戦争やナポレオン戦争によって「国民」や「国家」という概念が生まれたのが、およそ1789年から1815年にかけてのことだが、1500年頃のヨーロッパを舞台とする本作において、そういった現代的な倫理や規定、思想の類は一切通用しない。そこにあるのは、金と暴力が全てを支配する、原始的かつ危険な世界だ。

貴族による封建制度が横行する中、金や権威を持たない個人一人一人は、政治や国家の運営に関与せず(出来ず)、王族・貴族に雇われる形で戦争に参加し、功を立てることで自分の立身出世を目論む。主人公マーティンが属する傭兵部隊は、領主アーノルフィに金で雇われ城塞都市に攻め込んでいくのだが、部隊のリーダーであるホークウッドの裏切りに合い、都市の制圧に一役買ったにも関わらず、報酬を受け取れないまま都市から締め出しを食らってしまう。

雨に晒され寒さと飢えに苦しむ中、軍団の紅一点であるマーティンの娼婦は、誰の子だかも分からない子供(マーティンは自分の子だと信じている)を出産するも、結果は死産。亡くなった子供を小さな酒樽に入れ、葬りさるため墓穴を掘ると、そこには剣を握った元兵士の聖人、「マーティン像」の姿が。それを見た仲間の枢機卿は「神の啓示だ!」と叫び出し、感化されたマーティンたちは、カルト集団と化して領主に復讐を誓う。

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巡礼者に化けたマーティンたちは、移動中の領主一行を襲撃し、行き掛けの駄賃とばかりに領主の息子のフィアンセ、アグネス姫を誘拐する。アジトに戻ったマーティンたちに輪姦されたアグネス姫は、以後カルト集団の首領マーティンの娼婦として側に置かれてしまうのだった。

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説明しているだけで頭が痛くなってくるあらすじだが、恐ろしいことにこの時点で物語は1/3も進んでいない。ここから先は、マーティン軍団による城征服、虐殺、籠城戦、そしてペストの大流行による阿鼻叫喚、からの内部紛争と、何でもありの様相を呈していく。その世紀末然としたカオスな有様は、正しくヴァーホーヴェン版「北斗の拳」、もとい「マッドマックス」といえるだろう。

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主演を務めるマーティン役のルドガー・ハウアーは、「危険な愛」以来度々タッグを組むヴァーホーベン組の常連だが、ヴァーホーヴェンアメリカ進出以前に「ブレードランナー」で当たり役を引き、既にスターへとのし上がっていたために、撮影当時は監督の指示を聞き入れず、役作りを巡ってヴァーホーヴェンと度々衝突したとか(その時の不和が原因で、以後二人は袂を分かった)。

トラブルはこれだけに留まらず、撮影期間中大麻や酒に溺れてセリフが入らず、使い物にならない演者が後を絶たないという地獄のような事態が巻き起こり、加えてアメリカ、スペイン、オランダ三国出資の大作映画という都合上、各国から注文や指図が入り乱れたことで、製作中ヴァーホーヴェンは心底憔悴しきったとか。

そんな撮影現場の混迷ぶりがフィルムに出たのか、はたまた出ていないのかは定かでないとして、映画自体の出来は傑作と呼ぶに相応わしく、そのカオスかつ暴力に満ち満ちた内容は、観客を1分たりとも飽きさせることはない。

これぞバイオレンス、これぞヴァーホーヴェン。どう見ても少女のそれにしか見えないアグネス姫の「危険な」肢体は、見ていて実にヒヤヒヤさせられるものの、演じるジェニファー・ジェイソン・リーは当時23歳。安心して(?)見て頂けることだろう。

グレート・ウォリアーズ/欲望の剣[Blu-ray]

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