その辺の趣味ブログ

主に映画の話しかしません。

好きな映画『ボディ・ダブル』

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好きな映画の紹介でも。今回はデ・パルマの「ボディ・ダブル

偏執的ともいえる「裏窓」「めまい」等のヒッチコック作品に対するしつこいオマージュ。そして、個性的過ぎる編集・演出がギラギラ光る、生粋の映画オタクブライアン・デ・パルマの個人趣味映画。以下はあらすじ。

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閉所恐怖症の売れない役者ジェイクは、同棲する恋人キャロルの浮気現場に遭遇し、居たたまれなくなりアパートを飛び出す。ジェイクは友人の家を転々とすることになるが、ひょんなことから転がり込んだある豪邸の窓際で、夜な夜な美女がストリップする様子を双眼鏡で発見する。だが、ある時美女の周囲に奇怪な男が出没する事を知り、助けようとするのだが……。

デビュー作である「ブルーマンハッタン/BLUE MANHATAN2・黄昏のニューヨーク」や、「悪魔のシスター」、「殺しのドレス」、そして傑作「ミッドナイトクロス」などで度々描いててきた、デ・パルマにとってのある種ライフワーク的な題材「peeping(のぞき)」を扱ったサスペンス作品。タイトルになっている「ボディダブル」とは、映画業界で用いられる撮影技術、いわゆる「替え玉」のこと。

「ふとした覗きがきっかけで事件に巻き込まれる」という「裏窓」の引用に始まり、主人公が抱える極度の閉所恐怖症が、いざという時の弱点になる「めまい」的展開や、途中でヒロインが交代する「サイコ」の要素など、とにかくヒッチコックの模倣に終始した本作は、デ・パルマがこれまでに培ってきたフィルムメーカーとしての手腕が遺憾なく発揮された集大成的作品…と、いえなくもないものの…

グルグルと回りながら繰り広げられる熱い抱擁とキス(アメリカの一般試写ではこのシーンで笑いが巻き起こったらしい)、サスペンスシーンにおけるクロスカッティング演出、そしてストーリーの展開や謎に対する種明かしなど、いざ内容を見てみれば、映画内で繰り広げられる多くの要素は、デ・パルマ自身が作った過去作品のアイディアの再利用ばかりで、もはや出来合い料理と言って差し支えないその近い出来に、観客・批評家からは総スカンを喰らい、興行的にも惨敗に終わった(第5回ゴールデンラズベリー賞では最低監督賞にノミネート)。

殺しのドレス」「ミッドナイトクロス」で既にヒッチコキアンとしての集大成を見せつけたデ・パルマが、なぜ再び集大成的映画を撮ったのか問われれば、それはデ・パルマが「過去作に囚われがちな自家中毒作家だから」の一言で説明できるものの、他にも、彼自身のプライベートが少なからず作品に影響を与えていて、例えば自分の彼女が他の男と寝ている現場を目撃してしまう主人公ジェイクの姿などは、当時妻だったナンシー・アレンの浮気現場に遭遇した際のデ・パルマ自身のショックが反映されている。

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浮気をしたことで夫の怒りを買い、最終的に電気ドリルで惨殺されてしまう美女グロリアの姿には、「浮気をする奴は許さん!」というデ・パルマの個人的な怒りが込められているのだが、この表現には当時かなりの批判が集中したとか。

この作品で何かしらの憑き物が落ちたのか、後年の「アンタッチャブル」で再び脚光を浴び、輝きを取り戻していくデ・パルマ。しかし、その後はまた自家中毒に陥って(何度目だ)…

傑作には程遠いものの、デ・パルマ好きにとってはなんとも捨てがたい魅力を放つ、替え玉映画の珍作。

ボディ・ダブル [DVD]

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