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主に映画の話しかしません。

好きな映画『ブルーベルベット』

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好きな映画の紹介でも。今回はデヴィッド・リンチの「ブルーベルベット

牧歌的な田舎町の美しさと、その背後に蠢く闇…公開直後、そのセンセーショナルな内容が物議を醸した問題作にして、その後のリンチの作風を決定づけた記念碑的作品。以下はあらすじ。

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ノース・キャロライナ州ランバートン。製材が主産業ののどかな町。よく晴れた日のこと、大学生のジェフリーは、庭仕事をしていて突然発作に襲われた父を見舞うため病院へ赴く。その帰り道、野原に落ちる何か異様な物を見つけ、いざ手に取ってみると、それは何と切り落とされた人間の片耳だった……。

ボビー・ヴィントンの歌「Blue Velvet」に着想を得たと語る、リンチが長年温め続けてきた企画。興行的にも批評的にも振るわなかった前作「デューン/砂の惑星」の記録的失敗によって、作家生命もここまでと思われたリンチに対し、プロデューサーであるラウレンティスが、(何故か)もう一度チャンスを与えたことで実現したのがこの映画だ。

デューン」の製作中、好き放題に口出しされた上に、ファイナルカット権すら与えられず散々な目にあった(その張本人がラウレンティス)リンチは、「次は絶対に自分の作品をコントロールする」と、当初予定されていた予算を半分に削ってまでファイナルカット権を勝ち取り、50年代の田舎町を舞台にした不快で不可解なミステリー映画を作り出した。

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ノース・キャロライナ州のランバートンに越してきた純朴な青年ジェフリーは、一見牧歌的で平和な街の裏で蠢く、正体不明の巨大な“闇”に足を踏み入れ、後戻りできない危険な世界へ飲み込まれていく…。

他所から越してきたジェフリーが、居場所を求めて見知らぬ田舎町を彷徨う姿は、転勤族であった父親に連れられ、様々な地を転々とする幼少時代を過ごしたリンチ自身の姿が投影されているそうで、暇さえあれば街の探索に繰り出し、不思議な場所や出来事を観察していたリンチは、ある時、服がズタズタに引き裂かれ、心神喪失状態で立ち尽くす女性の姿を近所で目撃したという。物語中盤、イザベラ・ロッセリーニ演じるドロシーが暴行を受け、半裸で住居から通りへと出てくるシーンの元ネタはそこからきている。

デヴィッド・リンチは映画監督になる以前、美大に通いシュルレアリスムの画家を目指していた芸術畑の人間であり、シュルレアリスムにおける絵画方法には、自分の無意識化からアイディアを取り出し紙面に映し出す「オートマティスム」というものが存在する。リンチがこの映画でやろうとしたことは、正しくオートマティスムが引き起こす「無意識の表出」であり、リンチが無意識の中から取り出した数々のエッセンスは、デビュー作の「イレイザーヘッド」同様「悪夢」として一本の映画へ凝縮された。

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ラストシーン、全ての悪夢が晴れ、家の窓際に一羽のコマドリが訪れる。ジェフリーのガールフレンド・サンディ曰く「コマドリの訪れは悲劇の終幕を意味する」とのことだが、二人の前で囀るコマドリは、模型によって作られた偽物、フェイクだ。

ジェフリーは未だ悪夢の中にいるのか、それとも、目覚めたこの世界がそもそも悪夢なのか?その答えは誰にも分からない。