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好きな映画『みんな〜やってるか!』

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好きな映画の紹介でも。今回はビートたけし第一回監督作品「みんな〜やってるか!

コメディアン、ビートたけしが送る最初で最後の長編映画(北野武名義では通算5作目)。以下はあらすじ。

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あるさえない男が、女の尻を追いかけ巻き起こしていくさまざまな出来事を描いた、コント集的な趣のナンセンス・コメディ。主演はたけし軍団の一員ダンカン(飯塚 実)。

平凡な独身男の朝男(ダンカン)は、「女とヤりたい」という漠然とした欲望を達成するべく、自動車を購入したり、銀行強盗を企てたり、現金輸送車を襲撃したりと、刹那的な思いつきで次々と行動を起こしていく。だが、目論みは悉く空回りし、着の身着のまま流されるまま、気がつけば時代劇に出演したり、ヤクザの抗争に巻き込まれたり、最終的には透明人間に変身したりと、事態はどんどん意味不明な方向に向かっていき…。

自殺志願者の男が様々な方法で自殺を図るも、そのいずれもが失敗してしまうサイレント・コメディ、バスター・キートンの「ハード・ラック」に恐らくはヒントを得たであろう本作の構造・ギャグの数々は、そのどれもが笑えばいいのか判断に困るシュールなものばかり。監督自身、全フィルモグラフィ中一番のお気に入りと豪語するのがこの映画なのだが、観客・批評家からの反応は軒並み「スルー」で、キタノファンの間でもしばしば物議を醸している。

お笑いビッグ3の一角に数えられ、「俺たちひょうきん族」や「元気が出るテレビ」などでコメディアンとしての地位が絶頂を迎えていた北野武が、「ビートたけし」名義でコメディ映画を作るということで、ファンの期待は否応にも高まっていたものの、蓋を開ければ支離滅裂な不条理ギャグ飛び交う意味不明なその内容に、当時の観客・批評家は「評価不可能」と匙を投げ捨てた。

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映画解説者、淀川長治氏は本作について「お笑い、観客、映画。全てを馬鹿にしてシニカルに描いている」と語り、北野武のニヒリスティックなスタンスを賞賛しているのだが、実際この時期の北野武は、手応えを感じたと語る前作「ソナチネ」に対する国内での評価の低さ、自身の言動や行動に対する世間の視線に対して辟易していたようで、本作の「お笑い要素」がどこかシニシズム的かつ投げやりで、あたかも「観客を馬鹿にしている」様に見えるのは、恐らく偶然ではなく、たけし流の意図的な「大衆批判」であることは間違いないだろう(北野武シニシズム的大衆批判の萌芽は、86年に発売された伝説の糞ゲー「たけしの挑戦状」からも既に見て取ることができる)。

この映画の公開直後、北野武はバイク事故を起こし全治1ヶ月の重傷で芸能活動を休止するのだが、後年当時の心境を振り返った際「もしかして自分で(事故に)行ったんじゃないかなって気がしないでもない」と語り、危うい心理状態にあったことを告白した。