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主に映画の話しかしません。

好きな映画『バーバー』

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好きな映画の紹介でも。今回はコーエン兄弟の「バーバー

平凡な男の平凡な人生に起こった、一度きりのチャンスとチェンジ。以下はあらすじ。

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1949年、カリフォルニアの片田舎サンタローザで床屋を営む無口な男エド・クレインは、いつものように仕事に勤しむ平凡な毎日を送る最中、ふとしたことから妻ドリスと彼女の上司デイブの浮気を疑い始める。そんなある日、店に来た客の一人から「ドライクリーニングの商売を始めるために資金を出してくれる人を探している」との話を聞かされ、すっかり乗り気になった彼は必要な資金を得るために、ドリスとの不倫をネタに相手のデイブを恐喝することを考える。だが、この思いつきが後に予想もしない事態を巻き起こし……。

「未来は今」の撮影中、資料として使っていた1940年代の様々な髪型を掲載したポスターを見たときに着想を得たと語る、コーエン兄弟お得意の雪だるま式クライムサスペンス。往年のフィルム・ノワールを思わせるモノクロ映画として公開された本作は、元々はカラー用のフィルムで撮影したものを編集でモノクロに変換した擬似モノクロ映画で、映画にはモノクロ版とカラー版のニ種類が存在している。

トリビアはさておき、本作で扱われるのはコーエン作品ではお馴染みの「噛み合わない犯罪劇」で、退屈な人生に飽きた中年男の主人公エドは、「髪型を変えるように人生を変えられたら」と、軽い気持ちで“チェンジ”を目指し、とある犯罪行為…ゆすりに手を染めていく。

そんな矢先に起こった悲劇は、更なる悲劇を呼び寄せ、まるで雪の斜面を転がる雪玉のように事態は取り返しのつかない方向へ流れていく。だが、一連の悲劇に輪をかけて悲劇的なのが、その悲劇の主人公の席に、自分(エド)が座っていないことだ。

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その若さと美しさに、自身の希望を託した一人の乙女。詐欺と分かったドライクリーニングと、UFOの存在を語る未亡人。自分が信じるものこそ嘘偽りであり、自分が嘘だと決めつけたものが真実であったときの残酷さ、そして滑稽さ。世界は常に自分の外で回っていて、自分は常に何かから置いてけぼりにされ続ける。

例え世界の主役になれなくとも、人は自分の人生の主役になることは出来る。だが、この物語で描かれるのは、自分の人生の主役になることすら許されない、哀れな男の哀れな物語だ。

チャンスという名のボールに対して、バットを振らずに見送り三振を決め込む人生を送ってきた人間が、ある日突然バットを持ち出したところで、ろくなことが起こるはずもなし。バットは人を殴るためにあるのではなく、ボールを打つためにこそあるのだ。

バーバー ― 2枚組 DTSスペシャルエディション (初回生産限定版) [DVD]

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