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主に映画の話しかしません。

好きな映画『パリ猫ディノの夜』

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好きな映画の紹介でも。今回はアラン・ガニョル、ジャン=ルー・フェリシオリによる共同監督作品「パリ猫ディノの夜

アカデミー賞アニメ部門にもノミネートされた、フランス・パリを舞台にしたフィルムノワールアニメ。以下はあらすじ。

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ディノは女警視のジャンヌと娘のゾエの家で飼われているオス猫。ギャングのボス、コスタに父親が殺されてしまったことから、ゾエは失語症になってしまった。ある日、ダイヤモンドが埋め込まれた魚の形のブレスレットをディノが持ち帰ってくる。不思議に思ったゾエは、毎夜どこかに出掛けるディノを追跡。実は、夜のディノにはもう一つの顔があって……。

屋根から屋根を伝い、夜のパリを一人と一匹の泥棒コンビが駆け抜ける。昼間は飼い猫として暮らす黒猫ディノは、夜になる度こっそり家を抜け出し、“泥棒猫”へと変身を遂げるヘンなやつ。

昼と夜とで異なる二面性を持つディノの姿に、観る者は不可思議な感覚を覚えるものの、そもそも猫とは夜行性で「狩り」を生業とする生き物であり、夜の街とは猫にとっては「狩場」に他ならない。怪盗アルセーヌ・ルパン誕生の地であるフランスの街で、夜の住人猫が泥棒家業を営むという設定はいかにもベタだが、そのベタさこそ、往年のフィルム・ノワールの再現を目論む製作陣からすれば、なるべくしてなった必然的な帰結といえる。

街を裏から牛耳る大物ギャング、ヴィクトール・コスタに目を付けられ、執拗に狙われる羽目になる失語症の女の子ゾエ。亡き父の幻影に苛まれながら、闇の住人に追いかけられる本作の筋書きは、名優チャールズ・ロートンが監督した唯一の映画にしてカルト的人気を誇る怪作「狩人の夜」にオマージュを捧げて作られたもので、ボートに乗ってコスタから逃れるシークエンス等に、その影響の強さが見て取れる。

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他にも、ギャング一味のキャラクター造形にはマーティン・スコセッシの「グッドフェローズ」や、タランティーノの「レザボア・ドッグス」からの引用が見られ、怪盗・ノワール・ギャングと、あらゆる「裏」の要素が混ぜ合わされたその内容は、そういったジャンルが好きな者にはニヤリとさせられること請け合いだろう。

夫を失った女刑事ジャンヌや、その娘のゾエ、そして怪盗ニコなど、この映画には主役と思しき主要人物が何人か登場するものの、その誰もが真の意味では主役となり得ない。何故なら、この映画の主役足りうる人物とは「表」と「裏」で、二つの顔を持つ者でなければならないからだ。

では、主役は黒猫ディノであるかといえば、それも正解とは言い難い。ディノはあくまで人間が持つ表裏のメタファーであって、主役とはまた異なる存在だ。この映画における本当の主役は…あえてここでは言わないとして、その正解はエンドクレジットを見れば一発で分かる。

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ジャズサウンドに乗せて俯瞰の夜景が薫り立つ、バンド・デシネ発祥の地、フランスが送るノワールアニメの小品。