その辺の趣味ブログ

主に映画の話しかしません。

好きな映画『ゼイリブ』

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好きな映画の紹介でも。今回はジョン・カーペンターの「ゼイリブ

メガネをかけるとあら不思議。最早伝説として語り継がれる、5分間にも及ぶ謎のストリートバウトも飛び出す、カネとメガネにまつわるエトセトラ。以下はあらすじ。

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極秘に進行しているエイリアンの地球侵略。そのエイリアンの正体を判別できる特殊なサングラスを手に入れた主人公は、抵抗運動に参加する事になるが……。

実は社会派、ジョン・カーペンターが送る、資本主義社会に対する皮肉と警鐘を描いたディストピアSF。ある日、不思議なサングラスを拾った日雇い労働者の主人公ナダは、サングラスを通して見える街の広告、テレビ、そして人までもが、それまでの常識とはかけ離れた姿で写ることに衝撃を受ける。

宣伝の看板・広告は、メガネを通して見れば「命令に従え」「結婚して、出産せよ」と書いてあり、雑誌や新聞、テレビ放送に至っては「消費しろ」「考えるな」「眠っていろ」「権力に従え」などの不気味な命令文が軒を連ねる。しかも、街の裕福そうな人々に目を向けると、そこには骸骨のような恐ろしい顔をした“エイリアン”の姿が。サングラスが社会や、それを操るエイリアン本来の姿を暴き、洗脳信号を見抜くことができる装置であることに気づいたナダは、エイリアンたちに対して戦う決意を固め行動を開始するのだが…。

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レーガン政権末期、贅沢のために自分の信念を売り渡し、資本主義に狂ったベビー・ブーマー世代が幅を利かせつつあった1988年。都会幻想に囚われた高学歴・高収入の若手ビジネスマン“ヤッピー”に対する皮肉として作られた本作は、「自分さえ良ければ他はどうでも良い」という自己中心的な支配階層の権力者と、その資本至上な社会構造に乗っかって、カネを稼ぐことのみに心血を注ぐ人間たちを、エイリアン…即ち“非人間”として描いた痛烈な社会批判映画だ。

先入観にとらわれ、偏った物の見方をすることを「色眼鏡でもの見る」と言うが、この映画の面白いところは、正しくその「色眼鏡」をかけることによって、物事の真実にたどり着けるという逆転現象が起こっているところだ。

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この世を支配する絶対的な力であるカネと権力は、弱者を眠らせ、細らせ、とことん虐げ力を吸い取っていく。だが、真の弱者であるところの「色眼鏡」を持たない者たちは、自分たちが何に支配されているのかも知らずに、ただ消費をすることに喜びと目的を見出す。この映画で描かれる数々の皮肉は、残念なことに、公開から30年経った今なお変わらない、資本主義社会の現実と本質だ。

だが、この映画は一つだけ誤った描写が存在する。それは、真実のメガネで紙幣を目にした時に書いてある、「this is your god(お前の神だ)」というメッセージだ。カネは確かに人間を支配し得るが、使い方を決めるのはあくまで自分であり、所詮はただの道具に過ぎない。何のために使うのかでなく、誰のために使うのかさえ忘れなければ、カネに人が支配されることはあり得ない。

痛烈、強烈、皮肉炸裂な、B級帝王カーペンターの最高傑作。

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