その辺の趣味ブログ

主に映画の話しかしません。

好きな映画『悪魔の植物人間』

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好きな映画の紹介でも。今回はジャック・カーディフの「悪魔の植物人間

「黒水仙」でアカデミー撮影賞を受賞した、元撮影監督のジャック・カーディフが送るカルトホラー映画。以下はあらすじ。

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大学教授で科学者のノルター教授は、生物の神秘に魅せられるがあまり、自身が勤務する大学の生徒たちを助手のリンチに誘拐させては、植物と併合させる人体実験を行う狂気のマッドサイエンティスト。教授が行う実験の主旨は、水と光だけで成長が出来る人間を作り上げることにあり、これが成功すれば、食糧危機にも人類が対応できるというものなのだが、既に実験台となってしまった学生たちには悲劇が待っていた…。

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「魔神ドラキュラ」のトッド・ブラウニングが1932年に作った問題作「フリークス」を思い起こさせる、本物の身体障害者を幾人も劇中に登場させた見世物ホラー映画。

夢の植物人間を作るため、これまでに何人もの学生を手下のリンチに誘拐させた、どうかしている生物学者ことノルター教授は、今日も手術台で眠る学生達にあらゆる遺伝子改造手術を施し実験を繰り返していく。だが、そのことごとくは失敗に終わり、醜い怪物へと変えられてしまった学生たちは、サーカス一座の見世物小屋に送られるという悲惨な末路を辿るのだった。

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誘拐の実行犯であり、教授の助手も務める醜男リンチは、その奇形ゆえに自身もサーカス一座に所属する一員なのだが、見世物小屋で働く自分に対して、日頃から強いコンプレックスと引け目に苛まれていた。教授の命令に従うことで、いつか自分の奇形を整形手術で治してくれると信じ込むリンチは、いつものように男子学生を誘拐してくるのだが、その男ブライアンは、ノルター教授が施した食虫植物との併合手術に適合し、ついに悪夢の怪物“植物人間”が誕生してしまった…。

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科学が引き起こした生物同士による合体の恐怖、そして悲壮を描いた古典SF「ハエ男の恐怖」を思わせる本作は、いかにもそれっぽいマッドサイエンティストや、いかにもそれっぽい悲劇と被害者が登場することで、これまた“いかにも”なB級感丸出しなマニアックビデオとして認知されているのだが、この映画の注目すべき点は、悪趣味満載な植物人間のクリーチャー造形や、身体障害者たちによる見世物ショーよりも、それを近くで傍観する小悪党リンチの行く末にこそある。

様々な人間たちに降りかかる様々な悲劇、そしてその末路が描かれていく中、最も惨めかつ救われない死に方をするのがノルター教授の腹心リンチで、自身がフリークス側であることを認めようとせず、他のフリークスたちから差し伸べられた手をことごとく拒絶した彼は、その結果として、最終的にはどこにも居場所がないまま、一人孤独な最期を迎えることになる。

人間誰しも一度は違う自分の姿を望むものだが、過度なコンプレックスが生み出す自身への拒否反応、そして不寛容さは、やがて他者に対する拒絶や差別を引き起こす。植物怪獣よりも醜い人間を生み出すのは、いつだって自分の心に住まうリンチの囁き声なのだ。

悪魔の植物人間 [DVD]

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