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好きな映画『茄子 アンダルシアの夏』

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好きな映画の紹介でも。今回は高坂希太郎監督の「茄子 アンダルシアの夏

黒田硫黄の短編漫画集『茄子』に収録された『アンダルシアの夏』を原作とする、47分の中編アニメ。監督は宮崎駿の右腕として一目置かれ、歴代ジブリ作品で中核スタッフとして活躍してきたスーパーアニメーター高坂希太郎。以下はあらすじ。

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スペイン・アンダルシア地方。そこでは現在、世界3大自転車レースの1つ“ブエルタ・ア・エスパーニャ”が行われていた。ペペはチームの一員としてこのレースに参加していたが、その最中にスポンサーから解雇通告を受けてしまう。やがてレースは彼が生まれ育った村にさしかかった。その頃、村の教会ではペペの兄アンヘルとぺぺのかつての恋人カルメンの結婚式が行われていた。ぺぺの心にこれまでの人生が駆け巡る。それを振り払うようにひたすらペダルを漕ぐペペ。そんな時、突然黒いネコが道に飛び出し、レースは思わぬ展開をみせるのだった…。

寺田克也大友克洋宮崎駿はじめ、アニメ業界内でもファンの多い原作を、アニメーターでありながら無類のサイクル好きでもある高坂希太郎が完全アニメーション化した本作は、1時間未満の短い上映時間ながらも、その高い質が評価された自転車アニメの傑作だ。

スペインはアンダルシア地方で開催される世界3大自転車レースの1つ“ブエルタ・ア・エスパーニャ”に参加する主人公ペペは、これまでの人生において、自転車以外にこれといったものが特にない生粋の自転車バカ。いつもいつでも、ここではないどこか遠くへ行くことを夢見ているも、現実は厳しく、これまで結果らしい結果も残せず、おまけにレースが終わればスポンサーとの契約を解消されてしまう絶体絶命の危機に立たされる。

茹だるような暑さの中、やがてレースコースが自分の地元の道へ差し掛かかると、そこでは丁度、要領が良く、あらゆる面で自分の一歩先をいく兄アンヘルが、かつての恋人カルメンと結婚式を挙げるところだった。

地元に縛られる自分、過去に縛られる自分、家に縛られる自分。あらゆる糸に絡められ、未来や外が見えなくなりそうになったその時、突然コースに乱入した黒猫が先頭グループの足並みを乱し、ペペの前にチャンスの前髪が現れる…

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長年地元に縛られ、日の目を浴びることなく燻る一人の独身男。そんな折にわかに降り注ぐ、千載一遇のビッグチャンス。何も持たない孤独なボクサーロッキー ・バルボアを演じたシルベスター・スタローンは、一夜(一度)限りのチャンスをモノにし、どん底からスター街道を駆け上がっていったが、本作のペペとロッキーの境遇はどこか似ているように思える。古今東西、「自分にはこれしかない」とダメになるまで拘り続けるのが、男という哀れな生き物だ。

この作品を作った高坂希太郎監督は、このアンダルシアの夏が初監督作品であり、本作制作時の年齢は41歳。お世辞にも早い監督デビューとは言えないのだが、それは監督業(設計士)よりアニメーター(大工)を専念したからであって、決して実力に欠けていたからではない。

だが、長年ジブリという“地元”に縛られ宮崎駿の元で働いていた高坂監督にとって、どこか遠くへ必死に抜け出そうともがくペペの姿は重なるものが多かったに違いない。ちなみに、モロにジブリな絵柄の本作だが、アニメーションの製作をしたのはマッドハウスで、ジブリは一切製作に関与していない。

茄子 アンダルシアの夏 [Blu-ray]

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