その辺の趣味ブログ

主に映画の話しかしません。

好きな映画『夜』

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好きな映画の紹介でも。今回はミケランジェロ・アントニオーニの「

現代社会における愛や友情の希薄さ、儚さを描いた「不毛」シリーズ4作中の3作目。以下はあらすじ。

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結婚して十年になる作家とその妻が、病床にある夫の友人を見舞った。彼の姿を見て、作家の妻は心が傾いていくのを感じる。それは同時に、夫婦の絆が失われていくことを意味していた……。

近代化と共に人間から失われつつある愛、友情、そして心。戦後20年で焼け野原から近代国家へと変貌を遂げた祖国イタリアの情景や、そこに住む人々の姿を独自の視点で描いたアントニオーニの作風は、資本主義が内包する空虚さと不毛さを巧みに暴き、そのアバンギャルドな内容は世界各国で賛否を巻き起こした。

その影響はソ連タルコフスキーギリシャアンゲロプロスなど、数々の巨匠にも波及していて、センシティブ且つシニカルなその視線は、今なお新しさと普遍性を放ち続ける。だが、この不毛関連作の評判は当時真っ二つで、特にアントニオーニのミューズであるモニカ・ヴィッティを主演に据えた前作「情事」は、カンヌ国際映画祭で上映した際、結末を巡って上映後観客からのブーイングが鳴り止まなかったという(挨拶のために舞台袖に控えていたアントニオーニはたまらず会場を去ったらしい)。

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話を映画に戻すと、本作「夜」における主役は三人いて、一人はフランスヌーヴェルバーグの象徴的ヒロイン、ジャンヌ・モロー。そして「甘い生活」「8 1/2」でお馴染みのマルチェロ・マストロヤンニと、最後にこの映画が出演二作目となるモニカ・ヴィッティだ。

マストロヤンニ演じる高名な作家ジョヴァンニは、裕福な家系の妻リディア(ジャンヌ・モロー)と送る長年の夫婦生活に疲れを感じ、日増しに心の距離を置くようになっていた。そんな折に二人は、ふとした切っ掛けを求めて著名人や富裕層たちが集まるアヴァンチュールな夜のパーティに参加するのだが、そこで出会った絶世の美女ヴァレンティーナ(モニカ・ヴィッティ)の存在が、二人の夫婦生活に明けることのない漆黒の夜をもたらしていく…

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浮気による破局や破滅はよくある話だが、本作における夫婦ジョヴァンニとリディアは、どちらかが浮気をしたところでその関係に変化は生じない。なぜなら、映画の開幕段階で二人の関係は既に冷え切っているからで、その根本的な原因や理由は、お互いによく分かっていない。

過去の選択、社会状況、周囲の環境、未来への不安…何がここまで自分たちの心を冷えさせるのか理解できずに、二人は互いの愛が目の前で死んでいく様子をただじっと見つめ続ける。この愛の死にゆく様や、死んでしまった心の姿を、ただ冷徹な目線で静かに描いていくのが、アントニオーニ作品の真骨頂だ。

ラストシーン、ジョヴァンニとリディアは、二人の絆の死を悟りながらも、“それでも”と互いの心を寄せようと身を重ねる。だが、そこにあるのはやはり、不毛で冷たい“何か”だけ。

現代社会に漂う不毛さ、無力感、そして温もりの欠如を描いた本作は、フェリーニの「甘い生活」と合わせて、富や発展がもたらす人間の堕落を巧みに描き出した傑作だ。

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