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好きな映画『隠し砦の三悪人』

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好きな映画の紹介でも。今回は黒澤明のアクション超大作「隠し砦の三悪人

黒澤明の秘蔵っ子、世界の三船が奔る、跳ぶ、そして斬る。以下はあらすじ。

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褒賞を夢見て山名と秋月の戦いに参加した百姓の太平と又七。だが、結果は何も出来ないまま、秋月の城は落ち、山名の捕虜にされ、挙句焼け落ちた秋月城埋蔵金探しの苦役をさせられる。夜、捕虜たちが暴動を起こし、それに紛れて脱走する二人だったが、偶然迷い込んだある谷で、薪の中から秋月の紋章が刻まれた金の延べ棒を発見する。すると、そこに見るからに怪しい屈強な男が現れ…

黒澤明作品で初のワイドスクリーンが取り入れられた本作は、それまでドフトエフスキー的な悲哀と残酷さが漂っていた黒澤映画としては初めてとなる、単純明快な痛快娯楽で物語を描き切った冒険活劇の傑作だ。

この映画の見所はなんといっても、世界の黒澤が撮る世界のサムライこと三船敏郎の数々の勇姿に尽きている。特に物語中盤における、馬術を用いて敵陣を駆ける三船の殺陣姿の迫力は尋常ではない。チャンバラ等の殺陣に関して、スタントダブルを用いらないことで有名な三船敏郎だが、この馬上における脅威の身のこなしに関しても、驚くことに全編ノースタントで自ら演じ切るという前代未聞のことをやってのけた。

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この馬術に関して、とにかく三船が好きで絶大なる信頼を寄せていた黒澤は、撮影前の段階で徹底的に馬術の訓練を課して完璧な動きを身につけさせたという。訓練中、三船は慣れない馬上の動きに何度も落馬して身体が満身創痍になりながらも、なんとか必死の思いで完璧な馬術を身につけたそうだが、後年当時の様子を本人が振り返った際、その過酷さ、凄まじさに関して「殺陣の訓練というより、本当に武将としてのトレーニングを積まされた」と語った。

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また、本作においてもう一つ語り草になっているのが、妖艶かつモダンなヒロイン雪姫を演じる新人(当時)上原美佐の気品溢れる立ち姿だ。

引かず、媚びず、たじろがず、どこまでも勝気で男勝りなその振る舞いは、時代劇の女性役に短パンを履かせるという、当時としては斬新なファッションの新鮮さも相まって、観客・評論家に大きな衝撃を与えた。

4000人規模の大規模オーディションによって決められた雪姫役だが、当の上原はそのオーディションには参加していない。何故なら、オーディションでは誰一人黒澤の厳しい眼鏡に敵わず、全て落選となったからで、その後に東宝スタッフが必死になって行ったスカウトの成果によって、当時役者でも何でもない、女子短大に通うただの一般人上原に白羽の矢が立った。

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役者経験は皆無の素人でしかない上原だったが、服飾に対する造詣の深さや、上流階級出身で普段より乗馬が趣味であったという品のよさ等は、黒澤が想像する雪姫のイメージにピタリとハマり、演技の良し悪しを超えた圧倒的な存在感を生むことに成功する。この持って生まれたオーラ、空気感こそ、監督が雪姫に求めたもので、4000人を落としてまでも上原の登場を待った黒澤の審美眼に狂いはなかったことが、この映画の大ヒットによって証明された。

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圧倒的な活劇描写と、役者の存在感。あらゆる要素が後世の映画に影響を与えた本作だが、その最たる例はやはり「スターウォーズ」だろう。

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亡国の姫と一人の忠臣。そしてそこに付きまとう二人の狂言回しという、スターウォーズの物語における基本設定は全てこの隠し砦の三悪人から引用されたものだ。「ジェダイ」は「時代(劇)」に因んだものであるし、ダースベイダーの配役に関しては、当初三船敏郎にオファーをかけていたほどに、ルーカスはこの映画、及び黒澤作品に大きな影響を受けている。

今見ても古くないどころか、今ではもはや見ること叶わない、とてつもない映像・アクション満載の大傑作。

隠し砦の三悪人 [Blu-ray]

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