その辺の趣味ブログ

主に映画の話しかしません。

入門『ブライアン・デ・パルマ』

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新年明けましておめでとうございます。今年一発目の記事は、カルトからゴミ映画まで多彩に生み出す名作家にして、アカデミー賞からシカトされ続けた無冠の巨匠デ・パルマの特集です。

ブライアン・デ・パルマ、それは、覗きとストーキングと暴力と負け犬が大好きな変態フィルムメーカー。「しつこい!」と言われ続けてもなお、作風を曲げずに似たような映画ばかりを作り続けた偏執狂。だが、その影響力や、当たった時の面白さが半端ではない凄い人。

そんな清濁併せ持つ彼の作品群ですが、とにかく本数が多い(長編だけで30本近くある)ために、初心者にとってはやや取っ付きにくいのも事実。というわけで、独断と偏見に基づく「とりあえずこれだけは見とけ」という、デ・パルマ初心者のための作品紹介をしていきます。それでは早速いってみよう。

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その①「ファントム・オブ・パラダイス(1974)」

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出ました。デ・パルマの代表作にして最高傑作。70年代、アメリカのミッドナイトムービーで大成功を収めたことによって、一躍デ・パルマの名を世に轟かせた出世作、そしてカルト映画のど定番の一本です。

主演はデ・パルマの学生時代からの盟友ウィリアム・フィンレイ。内容はロックとオカルトとミュージカルが合体した、オペラ座の怪人風味の闇鍋といった感じ。色んな意味でめちゃくちゃな映画ですが、めちゃくちゃ面白いのでとにかくオススメ。全社畜が泣いた。

オススメ度-★★★★★

悪趣味度-★★★★★

演出の凝り具合(しつこさ)-★★★★★

作品の完成度-★★★★★

 

その②「キャリー(1976) 」

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いじめられっ子のリベンジ映画ことキャリーです。原作はスティーブン・キング。余りにリアルで陰湿ないじめの描写は、キングが自分の奥さんから聞いた話を元に作ったとか。とにかく陰湿かつ凄惨で救いのない映画ですが、その復讐ぶりの凄まじさや、主演のシシー・スペイセクの迫力、そして名優ロディ・パイパーのネジの飛んだ怪演が光るホラームービーの傑作。続編、リメイク版は見なくていいです。ちなみにキングにとってキャリーは初めてヒットに恵まれた作品らしく、非常に思い入れが深いんだとか。

オススメ度-★★★★☆

悪趣味度-★★★★☆

演出の凝り具合(しつこさ)-★★★★☆

作品の完成度-★★★★☆

 

 

その③「殺しのドレス(1980)」

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ゴリゴリのヒッチコックフォロワーであるデ・パルマがノリノリで作った、「サイコ」をモロパク…オマージュしたサスペンス映画。長回し風編集や、モンタージュ、そしてトリックなど、ヒッチコックの作風を独自の解釈でもって作り上げた数々の映像は、ややしつこいながらもめちゃくちゃカッコいい。ちなみにヒロインのナンシー・アレンは、デ・パルマ作品の常連であり、当時の奥さんでもあります(この映画の3年後に離婚)。

オススメ度-★★★★☆

悪趣味度-★★★★★

演出の凝り具合(しつこさ)-★★★★★

作品の完成度-★★★★☆

 

 

その④「ミッドナイトクロス(1981)」

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これぞデ・パルマ、これぞ映画な一本。偶然居合わせた事故現場から始まる、女と男のミステリーサスペンス劇。ぶっちゃけプロットや元のアイディアはアントニオーニの「欲望」のパク…オマージュなものの、音声トラックを繋ぎ合わせ、事件の真相へ徐々に近づいていく描写の面白さ、異様なまでの演出のこだわり様は、流石のデ・パルマ、めちゃくちゃ上手いです。そしてラストに待ち受ける衝撃の展開も、やはりデ・パルマらしさに溢れていて素晴らしい。

余談ですが、タランティーノはこの映画に出ているトラボルタのカッコよさに心底惚れたらしく、パルプフィクションで出演のオファーをかけたのも、この映画を見たのがきっかけなんだとか。

オススメ度-★★★★★

悪趣味度-★★★☆☆

演出の凝り具合(しつこさ)-★★★★☆

作品の完成度-★★★★★

 

 

その⑤「スカーフェイス(1983)」

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暴走、暴発、暴力、暴虐。核弾頭のごときデ・パルマの凶暴性が炸裂した、ダーティピカレスクロマン・スカーフェイスです。ハワードホークスの「暗黒街の顔役」を大胆にリメイクした本作は、主人公がとにかく悪いことを全部やり遂げる酷い(けど最高な)映画です。いかにも成金、粗野で粗暴で下品な主人公トニー・モンタナの生き方は、最低すぎるにも関わらず何故か無性に惹かれてしまう魔力を秘めています。それにしても、この頃のアル・パチーノは震えるほどにカッコいい。

オススメ度-★★★★★

悪趣味度-★★★★★

演出の凝り具合(しつこさ)-★★★☆☆

作品の完成度-★★★★☆

 

 

その⑥「アンタッチャブル(1987)」

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同名のテレビシリーズを映画化した、デ・パルマ作品きっての優等生。デ・パルマらしい変態性や、演出のしつこさを極力抑え、男たちの熱い友情、そして胸躍るドラマを職人仕事で見事に描き切った本作は、アカデミー賞において4部門にノミネートされ、内助演男優賞ショーン・コネリーが受賞するなど、アメリカの賞レースとは無縁なデ・パルマ作品としては異例の快挙を成し遂げました。この映画で一躍巨匠のレールに乗りかけるデ・パルマでしたが、この後再びこだわり映画を連発したお陰で、無事にB級監督の地位に帰還します。

オススメ度-★★★★★

悪趣味度-★☆☆☆☆

演出の凝り具合(しつこさ)-★★☆☆☆

作品の完成度-★★★★★

 

その⑦「カリートの道(1993)」

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デ・パルマが最後の輝きを見せた(あくまで個人的な見解)ギャング映画の傑作。かつて麻薬王として裏の世界でブイブイ言わせた大物ギャングカリート・ブリガンテ。もう暴力の世界から足を洗うと決めたにも関わらず、それでも付き纏い離してくれない闇と病み。デ・パルマが持つ暴力性、負け犬賛歌、映像へのこだわり。そして破滅の美学が最高の塩梅でブレンドされた、枯れた魅力迸る傑作ギャング映画です。キャストといい設定といい、スカーフェイスのトニー・モンタナのIFストーリー的な本作ですが、結局辿る末路は…

オススメ度-★★★★★

悪趣味度-★★★☆☆

演出の凝り具合(しつこさ)-★★★☆☆

作品の完成度-★★★★☆

 

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「あれ…俺の紹介は…?」

はい、そんな感じで、独断と偏見に基づく「とりあえずこれだけは見とけ」作品計7本でした。手っ取り早く代表作だけ抑えたいという人は、この辺りを見ておけば間違いないと思います。ちなみにある意味一番の代表作ともいえる「ミッション:インポッシブル」に関しては、どうせ皆言われなくても自然と見ているだろうという想像の元、ここでは敢えて外しました。(アンタッチャブル以上にデ・パルマが雇われ職人に徹しているのも個人的にはマイナスポイント)。

『おわりに』

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デ・パルマ、それは偉大なるサスペンスの帝王、ヒッチコックの正統後継者にして、バイオレンス・変態映画の巨匠。かつてスピルバーグ、ルーカス、コッポラ、そしてスコセッシらと肩を並べる存在であった彼は、名だたる巨匠と共にアメリカ映画界を席巻し、ハリウッドの顔役としてその頂きに永遠に君臨するはずでした。しかし、ゴミ映画や変態映画を量産しまくり、挙句の果てには大作映画を大コケさせたことで、ハリウッドから追放されます。

傑作を撮ったらすぐ調子に乗り、「しつこい」映画を嫌がらせのように作り続けるその姿勢。評判が悪いと分かっていても、懲りずに下品・残酷描写を描き続けるタチの悪さ。実力はあるのに品がない、巨匠であるのに庶民的。

自分のやりたいことをとことん追求し、叩かれ殺されかけてもタダでは起きない彼の背中は、まるでスカーフェイスのトニー・モンタナそのものと言えるでしょう。自分の映画をこき下ろす批評家、観客に対してデ・パルマは叫びます

俺を殺りたきゃ軍隊を連れてきな おれはトニーモンタナ(ブライアン・デ・パルマ)だ!

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モンタージュの帝王クエンティン・タランティーノは、映画監督そのものにハマったのはデ・パルマが初めてだったと語ります。彼の生み出した数々の演出、バイオレンス、そして変態性は、ハリウッドで第一線を張る、現代の巨匠たちにも脈々と受け継がれました。デ・パルマは、本当に偉大な映画監督なんです。変態だけど。

尺の都合上、ここでは紹介しきれなかった(しつこすぎる)代表作・珍作も、いずれ紹介できればいいなと思ってます。それではまた。

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傑作だけ見て終わらせるなんて、もったいない!

 

余談

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2012年の「パッション」を最後に引退したと思われていたデ・パルマですが、なんと来月に新作が公開されます。ひえ〜!こりゃー見るしかないですね。