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主に映画の話しかしません。

好きな映画『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』

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好きな映画の紹介でも。今回はテリー・ギリアムの最新作「ドン・キホーテ

夢と現実、妄想と妄執。狭間を揺れ動く一人の老騎士は、想像の翼で宙を舞う。だが、その先に待ち受けるのは…以下はあらすじ。

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仕事の意欲を失ったCM監督のトビーは、スペインの田舎で撮影をしていた際、学生時代に自分が撮った映画『ドン・キホーテを殺した男』のDVDを持つ男と出会う。舞台となった村を訪れたトビーは、かつて主役に抜てきした靴職人の老人ハビエルと再会する。自分を本物の騎士だと信じる老人は、トビーを従者のサンチョだと思い込み、強引にトビーを連れて冒険の旅へと繰り出す…

スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスが1600年ごろに書いた小説「ドン・キホーテ」は、 騎士道物語の読み過ぎで現実と物語の区別がつかなくなった郷士が、騎士を名乗って冒険の旅に繰り出す物語。風車を怪物と見立てて突撃していく内容からも、主人公はいわゆる「狂人」として描かれているのだが、この物語に心酔(取り憑かれている)するテリー・ギリアムは、ある種ライフワーク的な題材としてこの「狂人と怪物」を長年描き続けてきた。

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未来世紀ブラジル」「バロン」「フィッシャーキング」「バンデッドQ」「12モンキーズ」「ゼロの未来」等、いずれの代表作を見ても分かるように、ギリアムの作風は「妄想と現実の闘い」というところで一貫していて、その創作のルーツはドン・キホーテからきている。

ギリアムにとって原点(原典)ともいえるこの物語は、過去にも自らの手で映画化しようと何度も企画が進められたものの、その全てが尽く失敗(30年間で9回頓挫した)。その惨憺たる失敗ぶりから、業界内では「映画史上最も呪われた企画」とも呼ばれたという(詳しくは映画「ロスト・イン・ラ・マンチャ」を参照)。

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物語を中世から現代に置き換えたギリアムのドン・キホーテだが、基本的な要素や結末は原作と同じで、老騎士ドン・キホーテは、従者サンチョ・パンサを従え、いもしない怪物、姫、冒険を追い求めて旅に繰り出す。そこに待ち受けるのは、数々の試練、苦難、そしてロマン。置いた老騎士ドン・キホーテは、なぜ見えない怪物と闘い続けるのか?見えない怪物とは何なのか?

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このドン・キホーテ物語に最も近い題材を扱った映画「フィッシャー・キング」においてギリアムは、妻を殺された事で自分を「騎士」と思い込む狂人の男を登場させた。男にとって妻が死んだ現実とは「怪物」そのものであり、夢から覚めて我に返ることは即ち死、「敗北」を意味する。

原作小説でもドン・キホーテは、その結末において「怪物などいない」という現実を悟り、狂気が抜けた末に衰弱死してしまう。世界のどこかに「何かがある」と思える内は、人は夢の中に生きる希望を見出すことができるのだが、何もないと分かってしまえば、そこにあるのは絶望と闇だ。

自覚の有無に関わらず、人はいつの時代も現実の中に神秘(夢)を求める。例えばそれは「神」であったり、「アイドル」であったり、「恋愛」であったり、「キャラクター」であったり、それらが全て科学や金で説明(実現)可能な現代においても、触れることのできない「何か」に人は惹かれ続ける。ディズニーランドに足を運ぶ人間も、コミケでコスプレをする人たちも、風車に突撃するドン・キホーテと何一つ違わない。

妄想・理想とは心の内の純粋さ、イノセントから生まれる産物であり、それは言い換えれば「子供心」とも言う。ドン・キホーテやギリアムが命がけで死守しようとしていたものは、そういった人の心の清らかさであり、辛い現実を生き抜き、闘うための希望だ。だが、夢は覚めるからこそ夢であって、映画ドン・キホーテでも老騎士は夢破れ、怪物に敗北する。

未来世紀ブラジル」がそうであったように、映画ドン・キホーテの結末はバッドエンド(敗北)か?たぶん、そうでもあるし、そうでもないのだろう。一つ確かなのは、ギリアムはこれからも死ぬまで夢を見続けるに違いないということだ。 

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