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好きな映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』

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好きな映画の紹介でも。今回は押井守の長編2作目「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー

そこは夢か、現実か。亀に乗った浦島太郎は、麦わら帽子の少女の夢を見る。以下はあらすじ。

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あたるの通う友引高校は、本番を明日にひかえて文化祭の準備に大わらわ。だが……翌日になってもやはりあたるたちは文化祭の準備をしていた。実は友引高校のみんなは同じ日を延々と繰り返していたのだ。事態に気付いた担任の温泉マークと養護教諭・サクラは、原因を究明しようとみんなを下校させるが、無事帰り着けたのはあたるとラムだけ。みんなは何度帰ろうとしても、友引高校に戻ってきてしまい…

テレビアニメ「うる星やつら」のチーフディレクターを務める押井守が、第一弾「オンリー・ユー」に引き続いて監督を引き受けた劇場版ニ作目。それまで「ニルスのふしぎな旅」や、OVA作品「ダロス」などで演出・脚本の仕事をこなしてきた押井にとって、本作は初めて自分の作家性を前面に出した作品として、また自身の作風を確立させた原点として記念すべき一作となった。

原作者高橋留美子の世界観、いわゆる「るーみっくわーるど」の再現に力を入れた娯楽作「オンリー・ユー」とは打って変わって、夢の世界を永遠にループする寓話的な展開や、「現実とは何か」を禅問答し続ける哲学的な要素など、後の押井作品の根幹となるテーマが数多く登場するこの一作は、SFマニアや映画マニアの間で絶賛される反面、原作ファンや作者の高橋留美子からは不評を買うという、賛否両論入り乱れる問題作でもある。

主人公あたるやラムの住む街友引町が、あたるの家を中心に永遠のループを彷徨い続ける本作の内容は、作中でも言及されるように「浦島太郎」や荘子の「胡蝶の夢」がモチーフとなっているのだが、それ以外にも、押井がお気に入りの映画監督として挙げるタルコフスキー、もっといえば、「惑星ソラリス」の影響が強く出ている。

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というのも、ソラリスという映画は、過ぎ去りし過去に対してモラトリアム症候群に陥る男が、意思を持つ惑星ソラリスに自身の記憶を具現化させて、身近な人間だけで作られた偽物の世界を永遠に彷徨い続けるという内容だからだ(押井はこの後にもOVA作品「天使のたまご」でタルコフスキー的世界観に再び挑戦している)。

植え付けられた記憶が原因で、夢と現実の境界が曖昧になるという展開は、古くはフィリップ・K・ディックの短編「追憶売ります」が有名だが、この「追憶…」や、映画「ブレードランナー」の原作ともなった「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の二タイトルは、どちらも後の傑作「ゴーストインザシェル」の原型となった作品であり、押井が本作を作るにあたって、ディックの作品を下敷きにした可能性は高い。

終わらない夏、永遠のループ。アニメ作品として当時斬新な手法を取り入れた本作は、後に生まれる「新世紀エヴァンゲリオン ※1」「涼宮ハルヒの憂鬱※2」などに多大な影響を及ぼした。

※1 エヴァンゲリオンは、セカンドインパクトという世界規模の災害(それに伴う気候変動)が起こったことによって、永遠に終わらない夏の世界を少年少女たちが彷徨う物語として有名。

※2 「エンドレス・エイト」という、ビューティフルドリーマーのプロットと非常に似たエピソードが登場する。また、涼宮ハルヒというシリーズ自体が、主人公涼宮ハルヒにとっての永遠のモラトリアム症候群を描いた学園SF作品である。