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主に映画の話しかしません。

好きな映画『魔術師』

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好きな映画の紹介でも。今回はベルイマンの「魔術師

世界三大巨匠イングマール・ベルイマンが撮った、不気味で不思議なナンセンスコメディ。以下はあらすじ。

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19世紀スウェーデン。魔術師フォーグラー率いる旅芸人一座が、ある町にたどり着く。暇を持て余していた領事エガーマンは彼らを屋敷に拘束し、警察署長や医師らの前で芸を披露させてそのトリックを見破ろうとするが……。

旅廻りのマジシャン一座と、彼らの見世物のトリックを見破ろうとする役人たちが織りなす、一夜のいたちごっこ。無口で胡散臭いインチキ魔術師を演じるのは、初期ベルイマン作品の顔ともいえるマックス・フォン・シドー。その助手兼妻役として共演するのは、これまたベルイマン作品の常連イングリッド・チューリン

ベルイマン映画の真骨頂ともいえる「顔」のアップが多用される本作は、その重々しい雰囲気と、ホラー(サスペンス)描写の巧みさ等から、一見真面目で難解な作品に映りがちだが、その実、ベルイマンのフィルモグラフィの中でも群を抜いて分かりやすく、また馬鹿馬鹿しくて笑えるのがこの「魔術師」だ。

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本作最大の特徴であり見所は、作中で扱われる真相・真理がコロコロと、まるでスイッチを切り替えるがごとく交互に入れ替わるところにある。

「AはBである」→「というのは嘘で、実はBはAであった」→「と思ったらやっぱりAはBだった」→「ところが本当はAはBで…」と言った具合に、その入れ替わりっぷり、超展開ぶりは完全にギャグで、真面目に観れば観るほど、真剣に捉えれば捉えるほど、シュールかつナンセンスなギャグが、観客の上空を滑空していく。

この「展開だけ見れば笑えるはずが、演出のせいで笑えない」という、ある種悪意に満ちたシニカルな作劇スタイルは、まんまスタンリー・キューブリックの作風の原点であり、特になんちゃって貴族の詐欺師レイモンド・バリーが、イカサマで成り上がっていく様子を描いたピカレスクロマン「バリー・リンドン」は、主人公の性格(何かと妻に嫉妬してすぐ他人を殴る小心者)や、漫画のような馬鹿馬鹿しい展開も含めて、キューブリック版「魔術師」といった内容になっている。

他にもこのスタイルに影響を受けたクリエイターは大勢いて、最近の監督ではアリ・アスターヨルゴス・ランティモス、古参どころではデヴィッド・リンチスティーヴン・スピルバーグ北野武など、「笑える展開なのに、笑えない」というシニカルギャグは、今なお世界中で愛され、フォロワーを生み続けている。

魔術師 HDリマスター版 [レンタル落ち]

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  • 発売日: 2015/10/07
  • メディア: DVD